「徽軫灯籠(ことじとうろう)」の謎

漢検以外

石川県にある三大庭園の一つ「兼六園」。この庭園の有名なスポットの一つに、「徽軫灯籠(ことじとうろう)」と言われる灯籠があります。
なかなか読みづらい字だと思っていましたが、どうしてこのような書き方をするのでしょうか。
今回はこの灯籠について調べてみたいと思います。

なお、本文中の写真は筆者が2022年当時に観光で訪れた際に撮影したものです。
その後、2024年1月1日に能登半島地震が発生し大きな被害が生じたところ、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

徽軫灯籠(ことじとうろう)とは

兼六園の中でも有名観光地であるためご存じの方も多いかと思いますが、霞ケ池のほとりにある二本脚の灯籠です。

写真の右側、石橋の奥にある二本脚の灯籠が「徽軫灯籠(ことじとうろう)」。兼六園のHPなどではもう少し写りがよい写真もあるので、詳細はそちらを参照されたい。

「ことじ」とは

漢字以前に「ことじ」とは何かというと、これは「琴柱/箏柱」と書き、琴の弦を支えている駒のことを指す言葉です。

琴の弦を張るために、「A」のような形のパーツが各弦に張られているのをイメージいただければ、それが「ことじ」です。

「徽軫」とは

徽軫灯籠(ことじとうろう)の「徽」「軫」の漢字の意味を漢検漢字辞典で調べると、

「徽」は「キ」「しるし」「よ(い)」と読みます。
「しるし」という意味では、「徽章(きしょう)」という熟語があり、これは所謂バッジやメダルのことを指します。「記章」と書換が可能な熟語なので、この書き方であれば見たことがある方も多いのではないでしょうか。
また、良い、清らかで美しい等の意味から「徽音(きおん)」「徽言(きげん)」といった熟語があります。

「軫」は「シン」「いた(む)」と読み、「軫念(しんねん)」というと特に天子(天皇)が心を痛める、という意味です。
このほか、熟語としての用例がないですが、「ことじ。琴の弦を支えるこま。」と、正に「ことじ」という意味を持つとされています。

「ことじ」を「徽軫」と書くのはなぜか

以上から、「徽軫」で「ことじ」と読ませることは困難であり、「徽軫」と書くのは「当て字」というべきでしょう。

では、結局なぜ「ことじ」を「徽軫」と書くのでしょうか。

これについては種々研究がなされているようではありますが、残念ながら正確なところは不明のようです。「徽」は音が清らかという意味を持ち、「軫」は「ことじ」という意味がありますから、両者を組み合わせると「清らかな琴の音を奏でる琴柱」ということで「徽軫」と当てられたようにも思われます。

単に「琴柱灯籠」としなかったのには、「ことじ」の中に琴の一パーツということのみならず、「徽(よ)い軫(ことじ)」という意味を持たせたかったためなのかも知れません。

現地にある「徽軫灯籠」を紹介する看板にも、「琴の糸を支える琴柱の形をしていることから、徽軫灯籠と呼ばれている」とあるのみで、その書き方に関する由来については触れられていない。

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2.難読漢字辞典/三省堂

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