外国地名を表す漢字表記

漢検以外

外国地名を表す漢字をまとめてみました。
アメリカやイギリスを「米国」「英国」というように、現在でも日常的に使われているものもあれば、一方で殆ど使われなくなった表現も存在します。
なお、外国地名はその表記方法は様々存在し、諸説あるものもありますので、今回は「漢検漢字辞典」に見出し語として掲載されているもののみを列記します。

外国地名の名称一覧

地域、種別については、2023年1月現在で外務省のホームページに公開されている「国・地域」を参照しています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html

なお、「漢検漢字辞典」に掲載されているものの、外国地名として列挙するのが微妙なもの、別立てで紹介する方が良いと思うもの以下にまとめました。

旧国名・旧称を表すもの

現存しない古代王朝や国家、現存するが呼び方が変わっている国など。

①ガンダーラ:健駄羅/乾陀羅
古代インドの地名。現在のパキスタン北西部ペシャワール付近。

②サイゴン:西貢/柴棍
旧ベトナム共和国(南ベトナム)の首都。現在のホーチミン市。

③シャム:暹羅
タイ王国の旧称。現代ではタイ原産の「シャム猫」としてその呼び方が残っています。

④ビルマ:緬甸
1989年にミャンマー連邦へ改名されるまでの同国の名称。ビルマの首都「ラングーン」も「ヤンゴン」に改称されました。現代では国名をカタカナ表記することが一般的であるためか「ミャンマー」を表す漢字表記は通俗的なものがなく、もし同国を漢字で表現したい場合は「緬甸」とせざるを得ません。

⑤プロシア:普魯西
プロイセンの英語名。もとドイツ連邦の中心的王国。第二次世界大戦後に東ドイツ、ポーランド、ソ連(現ロシア連邦)に分割。世界史では「普仏(ふふつ)戦争」などのように使われるため、「プロイセン=普」と当てることは比較的有名かも知れません。

⑥ヘブライ:希伯来
他民族がイスラエル民族やその文化、言語をいうときに用いた名称。ヘブル。また、パレスチナにあった古代王国の名称。イスラエルで使用されている言語は「ヘブライ語」ですね。

⑦ペルシャ:波斯
イランの旧称。「ペルシア」とも。「ペルシャ人」「ペルシャ語」をはじめ、湾岸戦争が発生した「ペルシャ湾」や「ペルシャ猫」「ペルシャ絨毯」など、イランやその周辺地域を表す言葉として今も多く使われています。

⑧ボンベイ:孟買
ムンバイ(=インドの都市)の旧称。「孟買」は「ムンバイ」の和名とされているため、必ずしも旧称のみを指す訳ではありませんが、漢検漢字辞典で旧称となっていたためこちらで紹介しています。

⑨ラオ:羅宇
現在のラオスで、インドシナ半島にある国のことです。また、ラオス産の竹で作った、キセルの雁首とその吸い口とをつなぐ管のことを「ラオ」と言い、その時にこの字を用います。

⑩ラングーン:蘭貢
④で紹介したとおり、ミャンマーの都市「ヤンゴン」の旧名です。
ちなみに「ビルマ」の首都は「ラングーン」でしたが、改称された後の「ミャンマー」の首都は「ヤンゴン」から「ネーピドー」に移っています(2006年)。したがって2023年1月現在、「ヤンゴン」は首都ではありません。

民族や言語を表すもの

特定の国や地域を指さず、民族や言語などの流動的なものの呼称。

①ウイグル:回鶻
中国の唐から元・宋にかけての時代にモンゴル高原などで活躍したトルコ系の民族。その後内乱などで四散し、現在は新疆ウイグル自治区の主要な構成民族となっています。

②ツングース:通古斯
東シベリアや中国東北部に住み、ツングース語を話す民族の総称。大部分は遊牧生活を営む。歴史で学ぶ「靺鞨(まっかつ)」はツングース系の民族ですね。

③ラテン:拉丁/羅甸
「ラテン語」「ラテン系」のように、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルの人々のことを指します。中南米地域のことを「ラテンアメリカ」と称することがありますが、ラテン語を話すことからこのような言い方をするようです。

その他

更に例外的なものとしては、「メリケン:米利堅」があります。「メリケン」とは「アメリカン」が訛った表現で、意味合いとしてはアメリカそのものやアメリカ人を指します。
近年では使うことも稀ですが、「メリケン粉」とは「小麦粉」のことを指すほか、漢検漢字辞典では「メリケン波止場」というものも例示として載せており、これは神戸港にある波止場のことです。現在は「神戸港震災メモリアルパーク」という公園になっています。
更に、拳骨で殴られることを「―を食う」のように表現することがあり、このイメージでは「メリケンサック」という武器が連想されます。ちなみにメリケンサックは「ナックルダスター」とも呼ばれるそうですが、それは余談過ぎるかも知れません。