パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「単(單)」です。
なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。
「単(單)」を含む漢字一覧
漢字 | 音読み | 訓読み | 熟語など | |
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1 | 単 單 | タン ゼン | ひと(つ)・ひとえ | 単寧(たんにん)・単于(ぜんう) |
2 | 憚 | タン | はばか(る)・はばか(り) | 忌憚(きたん) |
3 | 鄲 | タン | 邯鄲(かんたん) | |
4 | 殫 | タン | つ(きる)・つ(くす)・ことごと(く) | 殫尽(たんじん) |
5 | 襌 | タン | ひとえ | 襌衣(たんい)・襌襦(たんじゅ) |
6 | 箪 | タン | わりご・はこ・ひさご | 箪笥(たんす)・箪食壺漿(たんしこしょう) |
7 | 騨 | タン タ ダ | ||
8 | 弾 彈 | ダン | ひ(く)・はず(む)・たま・はじ(く)・はじ(ける)・はず(み)・ただ(す) | 弾圧(だんあつ)・弾丸黒子(だんがんこくし) |
9 | 戦 戰 | セン | いくさ・たたか(う)・おのの(く)・そよ(ぐ) | 戦闘(せんとう)・戦慄(せんりつ) |
10 | 闡 | セン | ひら(く)・ひろ(まる)・あき(らか) | 闡明(せんめい) |
11 | 嬋 | セン ゼン | あで(やか) | 嬋娟/嬋妍(せんけん) |
12 | 蟬 | セン ゼン | せみ・うつく(しい)・つづ(く) | 蟬蛻(せんぜい)・秋蟬(しゅうせん) |
13 | 鱓 | セン ゼン | うつぼ・ごまめ | 鱓(ごまめ)の魚(とと)交じり |
14 | 禅 禪 | セン ゼン | ゆず(る) | 禅譲(ぜんじょう) |
※「単」と同様に「タン」と読む字が多い一方、「セン」と読む字もいくつかあるので、しっかり区別しましょう。
①タン系
「単」:常用漢字。表外読みとして音読みが「ゼン」、訓読みが「ひと(つ)」、「ひとえ」。十二単(じゅうにひとえ)が代表的か。
・単寧(たんにん):植物の樹皮や葉などに含まれる渋みの成分。インクや染料の原料。五倍子(ふし/ごばいし)、没食(もっしょくし/ぼっしょくし)から採る。
※単文孤証(たんぶんこしょう):学問などで、証拠不足であること。僅か一つの文章と一つの証拠の意から。⇔博引旁証。
・単于(ぜんう):中国北方の遊牧騎馬民族、匈奴の君主の称号。
「憚」:憚で始まる熟語の用例はないが、忌憚(きたん)などは比較的有名。「憚(はばか)り」だと便所の意味もある。
※忌憚(きたん): 忌みはばかること。遠慮すること。「―なく」
「鄲」:訓読み、用例ともになし。戦国時代の趙(ちょう)の都「邯鄲(かんたん)」が唯一の使途であり、漢検での出題可能性は低めか。
「殫」:見出し熟語なし。意味としては「尽」に近い。
※殫尽(たんじん):なくす。
※殫見(たんけん):見つくす。
「襌」:見出し熟語なし。訓読みは「ひとえ」のみだが「はだぎ」の意味も持つ。
※襌衣(たんい):ひとえ。=単、単衣
※襌襦(たんじゅ):はだぎ。下着。「襦」は肌着の意味。
「箪」:箪笥(たんす)が最も有名な用例。「わりご」とは竹で編んだ丸井米びつのこと。
・箪食壺漿(たんしこしょう):民衆が食べ物と飲み物を用意して、自分たちを救ってくれる軍隊を歓迎すること。
・箪食瓢飲(たんしひょういん):粗末な食事のこと。貧しい暮らしに甘んじて、学問にはげむたとえ。
「騨」:音読みが3通りもあるが、見出し熟語、用例ともになし。漢字の意味は白い斑のある青黒色の馬、連銭あしげ。国内地名として「飛騨(ひだ)」があるが、漢検では出題されづらいか。
②ダン系
「弾」:常用漢字。例外的に「ダン」と読む。用例は数多く、弾圧(だんあつ)、弾劾(だんがい)など。
・弾丸黒子(だんがんこくし):極めて狭い土地のたとえ。
・弾機(ばね):①鋼などを、らせん状に巻いたりして弾力をつけたもの。②足腰の弾力性。=発条
③セン系
「戦」:常用漢字。「セン」と読む代表格はこの字か。たたかうという意味と、おののくという意味があり、戦慄(せんりつ)は後者の意味合い。
・戦闘(せんとう):武器を取ってたたかうこと。
・戦慄(せんりつ):恐れてふるえること。ふるえおののくこと。「戦慄く」と書くと「わなな(く)」と読む。
「闡」:開くや広まるという意味合いの漢字。
・闡明(せんめい):はっきりしない道理などを明らかにすること。「鮮明」と似ているが、こちらはあざやかで明るくはっきりしている、態度などが明確であることを指すため、微妙に意味合いが異なる。
「嬋」:あでやかと読み、美しくたおやかなさまという意味。
・嬋娟/嬋妍(せんけん):あでやかで美しいさま。なよなよとして美しいさま。
・嬋媛(せんえん/おそよか):あでやかで美しいさま。うるわしいさま。つややか。漢検漢字辞典では「おそよか」という熟字訓しか見出し語の読みとして認めていないが、他の辞書では「せんえん」と音読みを掲載しているケースもあり。
「蟬」:訓読みは「せみ」のほか、「うつく(しい)」「つづ(く)」とも読む。
・蟬蛻(せんぜい):①セミの抜殻。うつせみ。②俗世間を超越すること。蟬脱(せんだつ)に同じ。
・秋蟬(しゅうせん/あきせみ):秋に鳴くセミ。秋のセミ。
「鱓」:海魚の「うつぼ」、またはお節料理で有名なイワシを干したもの、田作(たづくり)の別称である「ごまめ」という訓読みがある。音読みの用例はない。
※鱓(ごまめ)の魚(とと)交じり:能力のない者が優秀な人々に交じることのたとえ。
④ゼン系
「禅」:常用漢字。例外的に「ゼン」と読む。「セン」という表外読みもあるが用例なし。「ゆずる」とは天子が位を譲る、という意味。
・禅譲(ぜんじょう):①古代中国で、天子の位を世襲でなく有徳者に譲ること。②権力者がその地位を後継者に譲ること。