【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「尃(甫+寸)」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「尃(甫+寸)」です。

間違えやすいですが「専(專)」とは全く別の字です。
新字体では「専」と「博」は右上の点の有無でしか差異がありませんが、後者の成り立ちは「尃(甫+寸)」なので、別の語系なんですね。

「専(專)」については別の記事でもまとめています。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「尃(甫+寸)」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1ハク
バク  
ひろ(い)博識(はくしき)・博奕/博打(ばくち)
2ハクう(つ)・と(る)・はばた(く)搏撃(はくげき)・搏景/搏影(はくえい)
3ハクうで・ほじし上膊(じょうはく)
4ハクうす(い)・うす(める)・うす(まる)・うす(らぐ)・うす(れる)・せま(る)・すすき薄情(はくじょう)・肉薄(にくはく)・薄荷(はっか)
5バク
ハク
しば(る)・いまし(める)束縛(そくばく)・呪縛(じゅばく)
6し(く)敷設(ふせつ)・敷衍(ふえん)
7つ(く)・かしず(く)・もり傅育(ふいく)
8くれ節榑(ふしくれ)立った
9あまね(し)・ひろ(い)・おお(きい)・し(く)溥儀(ふぎ)※人名
10おく(る)・おくりもの賻儀(ふぎ)・贈賻(ぞうふ)
11簿
簿記(ぼき)・鹵簿(ろぼ)

「博」と同様に「ハク」と読むパターン、「敷」と同様に「フ」と読むパターンに二分。それぞれ代表的な熟語を覚えることで記憶に定着させましょう。別記事で触れていますが、「専(專)」との区別に要注意。

①ハク・バク系

」:常用漢字。広い、行き渡るという意味では「博愛」「博識」、賭け事やばくちと言う意味では「賭博(とばく)」「博徒(ばくと)」など。
・博識(はくしき):広く物事を知っていること。また、その人。
・博施済衆(はくしさいしゅう):広く民衆に恩恵を施し、苦しみから救うこと。
・博聞強記(はくぶんきょうき):広く見聞して、よく記憶していること。博覧強記(はくらんきょうき)とも。
・博奕/博打(ばくち):①金品を賭けて、さいころや花札などの勝負をすること。②成功は運任せというような危険な試みをあえてすること。

「搏」:「羽搏く/搏く」で「はばた(く)」と読み、他には打つ、取る、捕まえるなどの意味がある。「摶(タン・まる(い))」とは別字。
・搏撃(はくげき):①手で打つこと。殴りつけること。②攻めること。攻撃して押さえつけること。
・搏景/搏影(はくえい):「物の影を打つ」ということで、捕らえることができないことのたとえ。また、手応えがないことのたとえ。

「膊」:腕という意味のほか、薄く切って干した肉という「ほじし」という意味もある。見出し熟語はなし。
※上膊(じょうはく):うでの、ひじから上の部分。

」:常用漢字。うすいという意味で「薄氷」、内容が少ない、乏しいという意味で「薄給」「薄利」、迫る、近づくという意味で「薄暮」「肉薄」など。イネ科の植物である「すすき」とも読む。
・薄粧(うすけわい):目立たない程度に薄く化粧すること。薄化粧。
・薄鈍(うすにび):薄いネズミ色。また、その色をした衣服。喪服や僧衣など。
・薄鈍(うすのろ):動作や反応がにぶいこと。また、そういう人をあざける語。
・薄伽梵(バガボン):仏教用語で如来。特に、釈迦の尊称。
・薄荷(はっか):シソ科の多年草。湿地に自生。葉にはメンソールが含まれ、ハッカ油を取る。漢名由来。

」:常用漢字。「ハク」とも読むが用例なし。「緊縛」「束縛」「呪縛」など、しばる、自由を奪うといった意味のほか、いましめるといった意味を持つ。
・縛日羅(バサラ):①金剛、または金剛石。②密教で、煩悩を打ち砕く法具。金剛杵(こんごうしょ)。「伐折羅」「跋折羅」とも。

②フ系

」:常用漢字。専ら訓読みの「し(く)」が使われ、音読みの「フ」はややマイナーな印象(表内読みではあるが)。そのためか、以下の熟語はいずれも「布」への書き換えが可能とされている。
・敷衍/布衍(ふえん):押し広げ、行き渡らせること。転じて、わかりやすい言葉で詳しく説明すること。「―して説明する」
・敷設/布設(ふせつ):装置や設備を設置すること。鉄道、電話、水道などにいう。

「傅」:「かしず(く)」という訓読みで問われるケースが多いか。「もり」とは、子供などに付き添って世話を焼く人の意味。
・傅育(ふいく):守り育てること。かしずき育てること。
※師傅(しふ):貴人の子を養育しながら教導する役。

「榑」:ごつごつとした手のことを「節榑(ふしくれ)立った手」と表現するが、その時の「くれ」はこの字。漢検漢字辞典では訓読みの用例のみ掲げられており、音読みである「フ」は、東方の日の出る所にあるという神木の名「榑桑(ふそう)」に用いる字として紹介されるに留まる。

「溥」:「あまね(し)」と読み、広く行き渡るという意味。歴史用語として、清国最後の皇帝の名称「愛新覚羅 溥儀(あいしんかくら ふぎ)」で使う字としての知名度が最も高いか。
※溥天(ふてん):天の覆う下。普天。

「賻」:おくる(≒贈)、特に金品を使って葬儀を助ける、またその贈り物と言う意味を持つ。
※賻儀(ふぎ):香典。「溥儀(ふぎ)」とは別。
※贈賻(ぞうふ): 喪のある家に贈る進物。香典。

③その他例外

簿」:常用漢字。「家計簿」「名簿」など「ボ」と読む。「ホ」と読む用例はなし。意味としては、文字を書くための竹の蓋。また、ものを書き込むために紙を綴じたもの。
※鹵簿(ろぼ):儀礼用の武器や武具を備えた兵を伴った、行幸、行啓の行列。