【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「甫」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「甫」です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「甫」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1
はじ(め)・おお(きい)衆甫(しゅうほ)・章甫(しょうほ)
2
と(らえる)・と(らわれる)・と(る)・つか(まえる)・つか(まる)捕捉(ほそく)・拿捕(だほ)
3ふく(む)・はぐく(む)哺乳類(ほにゅうるい)・反哺(はんぽ)
4
おぎな(う)・たす(ける)補助(ほじょ)・補綴(ほてい/ほてつ)・補弼(ほひつ)
5舗/舖
みせ・し(く)老舗(ろうほ/しにせ)・舗装(ほそう)
6し(く)・みせ鋪装(ほそう)
7はたけ田圃(でんぽ)圃畦(ほけい)
8
ほじし脯資(ほし)
9
のが(れる)・に(げる)・おいめ逋税(ほぜい)
10は(う)・はらば(う)匍匐(ほふく)
11うら津津浦浦(つつうらうら)・曲浦(きょくほ)
12

がま・かわやなぎ・むしろ蒲魚(かまとと)・蒲鞭(ほべん)の罰
13
たす(ける)・すけ輔弼(ほひつ)・匡輔(きょうほ)
14
ゆうめし・く(う)・やしな(う)餔時(ほじ)・餔啜(ほせつ)
15
あや・ぬいとり黼黻(ふふつ/ほふつ)・黼座(ほざ/ふざ)
16
葡萄(ぶどう)・葡萄茶(えびちゃ)
17ユウまど・みちび(く)牖戸(ゆうこ)

※「ホ」と読む字は「フ」「ブ」とも読むものが多いものの、ほとんど用例がないため「ホ」とのみ読むものと覚えるのが得策かと思います。

①ホ系

「甫」:はじめ、おおきいという意味。見出し語なし。
※衆甫(しゅうほ):物事の始まり。
※章甫(しょうほ):殷代の冠の名。「章甫(しょうほ)を履に薦(し)く」とは、上下や善悪が逆転することを指す。

」:常用漢字。「捕捉」「捕獲」など、つかまえる、とらえるという意味での用例が多い。「ブ」という音読みが表外読みにあるが、漢検漢字辞典での用例なし。日本史用語では平安時代の令外官(りょうげのかん)の一つに「追捕使(ついぶし)」というものがある。
※拿捕(だほ):とらえること。特に、軍艦などが領海を侵犯した外国の船舶をとらえること。

」:常用漢字(2010年11月30日内閣告示により追加された文字の一つ)。口にふくむという意味と、はぐくむという意味がある。
・哺乳(ほにゅう):母乳を飲ませること。また、母乳を飲ませて子を育てること。
※反哺(はんぽ):親に恩返しをすること。カラスの子は成長してから老いた親に食べ物を口移しして養うということから。
・哺育/保育:①幼児を保護し育てること。②子供に乳や食べ物を与え、はぐくみ育てること。「保育」は「哺育」の書き換え。

」:常用漢字。「補強」「補充」のようにおぎなう、つくろうという意味、「補助」「補佐」のように助けるという意味が代表的。その他、官職を授けるという意味で「補職(ほしょく)」など、正式に職に就く前の身分という意味で「候補」などの使い方がある。
・補陀落(フダラク):インドの南海岸にあり、観世音菩薩が住むという山。
・補綴(ほてい/ほてつ):①破れや綻びなどを補いつづること。また、文章の不足を書き補うこと。補筆。②古人の字句をつづり合わせ、詩文を作ること。
・補弼(ほひつ):君主が政治を行うのを助けること。また、その役や人。「輔弼」とも。

」:訓読みは「みせ」「し(く)」。
・老舗(ろうほ/しにせ):先祖代々の家業を守り続け、信用のある店。
・舗装(ほそう):道路の表面をコンクリートやアスファルトなどで固めて整えること。「鋪装」の書き換え字。

「鋪」:「」と音読み、訓読み共に全く同じで、使い方もほぼ同一。「鋪装(ほそう)」「店鋪(てんぽ)」など。

「圃」:「はたけ」と読み、音読みの見出し語はなし。
※田圃(でんぽ):①耕作地。水田。②田のあぜ。田のうね。「田畝」とも。なお、「田ん圃」とかけば「たんぼ」と読める。
※圃畦(ほけい):はたけのうね、はたけ。

「脯」:訓読みの「ほじし」とは、細かく裂いて干した鳥獣の肉のこと。音読みの見出し語はなし。また、音読み「フ」の用例もない。
※脯資(ほし):乾肉などの食品のこと。=脯羞

「逋」:特に租税等の支払いから「のがれる」という意味で使う字。
・逋税(ほぜい):税からのがれること。また、滞納している税。≒脱税

「匍」:「匍匐前進(ほふくぜんしん)」で使用する字。腹這って進むこと。
・匍匐茎(ほふくけい):つる状に伸びて地上をはい、節から葉や根を生じる茎。サツマイモ、オランダイチゴなど。ランナー。

」:常用漢字だが「ホ」という音読みは表外読み。見出し語にも音読みの用例がない。
・浦塩斯徳(ウラジオストック):ロシア連邦沿海州南端部の日本海に臨む港湾都市の名。
・浦回/浦廻/浦曲(うらみ/うらわ):海岸が湾曲して入り込んだところ。入り江。
※曲浦(きょくほ):まがりくねった岸辺の浦。

「蒲」:「がま」「かわやなぎ」は植物の名。「むしろ」はガマで編んだむしろという意味。「蒲焼(かばやき)」「蒲公英(たんぽぽ)」「蒲鉾(かまぼこ)」など日常に馴染みのある単語でも使用例が多い。
・蒲魚(かまとと):わかっているのに、上品ぶって分からないふりをすること。うぶらしく振舞うこと。また、その人。知らないふりをして、蒲鉾は魚から作るのかと聞いたことから。
・蒲葵(びろう):ヤシ科の常緑樹の名。
・蒲桃(ふともも):脚のことではなく、フトモモ科の常緑小高木の名。
・蒲鞭(ほべん)の罰:ガマの鞭で、罪人に恥を与えるだけの軽い罰。転じて、寛大な政治のこと。
・蒲柳(ほりゅう):①カワヤナギの別称。②カワヤナギの弱弱しい性質から、体質が弱いこと。

「輔」:人名でよく使われるが、助ける、力を添えるという意味。「輔(すけ)」とは、律令制で省の第二等官の名称。
・輔弼(ほひつ):天子が政治を行うのを輔こと。また、その役や人。「補弼」とも。
・輔翼(ほよく):鳥が羽でかばうように、助け守ること。
※匡輔(きょうほ):非を正し、及ばないところを助けること。 また、その人。

「餔」:訓読みは「ゆうめし=夕飯」「く(う)」など、やたら行儀の良くない読み方が並ぶ。「やしな(う)」とは、食べ物を与えるという意味合い。見出し語はない。
※餔時(ほじ):日暮れ時。また夕飯時。「晡時」とも。「晡」は漢検対象外。
※餔啜(ほせつ):飲食。

「黼」:訓読みは「あや」「ぬいとり」。「ぬいとり」とは布地に模様や文字などを色糸で縫って表すこと、またその模様のこと。部首は「黹(ち、ぬいとり、ふつへん)」。非常にマイナーな部首で、漢検配当でも当該部首の漢字は「黹」「黼」「黻」のみ。
漢検漢字辞典では「フ」を見出し語として挙げているものの、熟語の用例では「フ」と読んでも「ホ」と読んでも構わないので、これも他と同様「ホ」と読む漢字として覚えれば良いかと思います。
・黼黻(ふふつ/ほふつ):①古代の天子の礼服のぬいとり。②美しい文章のたとえ。③天子を助けること。
※黼座(ほざ/ふざ):帝座。

②その他例外

(1)ブ

「葡」:「葡萄(ぶどう)」が最も有名で、ほぼ唯一の用例。熟字訓としては「葡萄牙(ポルトガル)」の略称として「日葡辞書(にっぽじしょ)」などの使い方をすることがあり、この場合は「ホ」と読むが例外的。
・葡萄(えび):①ブドウの別称。②エビヅル、エビカズラの略。
・葡萄茶(えびちゃ):「ぶどうちゃ」ではない。黒みがかった赤茶色。「海老茶」とも。

(2)ユウ

「牖」:格子を嵌めた窓(連子窓)という意味で、「ユウ」と読む。
※牖戸:窓の戸。 また、窓と戸。 出入り口。
・牖中(ゆうちゅう)に日を窺う:視野の狭いたとえ。知識や見識の浅薄なことのたとえ。窓から太陽を窺いみる窓から。