【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「翏(羽+人+彡)」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「翏(羽+人+彡)」です。わかりづらいですが「謬」の右側です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「翏(羽+人+彡)」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1ビュウあやま(る)誤謬(ごびゅう)・謬見(びゅうけん)
2ビュウ
リョウ
ボク
キュウ
あやま(る)・たが(う)・もと(る)・いつわ(る)・まつ(わる)綢繆(ちゅうびゅう)・繆繞(りょうじょう)
3リョウさび(しい)・しず(か)寂寥(せきりょう)・廓寥(かくりょう)
4リョウ
リク
たで蓼(たで)食う虫も好き好き・蓼虫忘辛(りょうちゅうぼうしん)
5リョウむな(しい)廖落(りょうらく)
6リュウ
リョウ
こがね・しろがね
7リクころ(す)・はずかし(める)・あわ(せる)殺戮(さつりく)・戮力同心(りくりょくどうしん)
8リクあわ(せる)勠力(りくりょく)
9キュウ
コウ
まつ(わる)
10キュウま(がる)・まつ(わる)・めぐ(る)・つが・とが樛木(きゅうぼく)
11コウにかわ・にかわ(する)・つ(く)・かた(い)膠着(こうちゃく)・膠漆(こうしつ)
12ロウにごりざけ・どぶろく・もろみ村醪(そんろう)・濁醪(だくろう)・醪酒(もろみざけ)

このパーツを含む漢字が常用漢字に存在しないため、漢検上位級を勉強していないと馴染みが薄い字がほとんどかと思います。更に読みのパターンも多様で覚えづらい印象です。熟語単位で覚えるのが良いでしょう。

①ビュウ系

「謬」:「ビュウ」という見慣れない音読みを持つ字。この中では唯一漢検準1級配当漢字であり、マイナー中のメジャーという位置付けか。意味としては「あやま(る)(=誤)」。なお、漢検漢字辞典での見出し熟語では、全て「繆」への書き換えが可能とされている。
※誤謬(ごびゅう):論理や知識などのあやまり。
・謬見/繆見(びゅうけん):あやまった見解や意見。

「繆」:漢検漢字辞典で音読みが4つもある。「ビュウ」と読むと①まとう、絡みつく、②誤る(≒謬)という意味、「リョウ」という読むとまつわる、巡らすという意味、「ボク」と読むと和らぐ、穏やか(≒穆)という意味、「キュウ」と読むと①交わる、②紐を巻き付けて絞めるという意味。辞書によって読み方も異なり、例えば漢字源では「リュウ」という読みを認めている一方で「リョウ」は掲げていない。このように非常に厄介な字であるが、基本的な使用例では「ビュウ」と読むケースが多いため、ここに掲げることとした。
※綢繆(ちゅうびゅう):①まとい包むこと、②結びしばること。③慣れ親しむこと。睦び合うこと。
※繆繞(りょうじょう):まといつく。
※繆繆(ぼくぼく):調和が取れて、精密であるさま。穆々(ぼくぼく)。漢字源では「りゅうりゅう」という読みを認めており、この場合は糸のもつれたさま、という意味。

②リョウ系

「寥」:「さび(しい)」「しず(か)」と読む。奥深く広いという意味もある。
※寂寥(せきりょう):ものさびしくひっそりしたさま。
※廓寥(かくりょう):広大でがらんとしていて、物寂しいさま。
・寥落(りょうらく):①少なくて疎らなさま。②おちぶれたさま。③荒れ果ててさびしいさま。
・寥寥(りょうりょう):①ものさびしいさま、また空虚なさま。②疎らで少ないさま。

「蓼」:「たで」という植物の名称として使われる例がほとんど。
・蓼(たで)食う虫も好き好き:人の好みはさまざまであることのたとえ。タデの葉は食べると辛いが、それを好んで食べる虫もあることから、人の嫌うものを好む者もいれば、人の好むものを嫌う者もいるということ。
※蓼虫忘辛(りょうちゅうぼうしん):「蓼食う虫も好き好き」と同じ。
※蓼莪之詩(りくがのし):漢字源に掲載。親孝行な子どもが、領主から課せられた労働で家を離れたために、親孝行できなかったことを両親の死後に悲しんでうたった詩のこと。または、両親が死んで、親孝行できない悲しみのこと。「蓼莪」は『詩経』の篇名。

「廖」:「むな(しい)」と読む。意味合いとしては「寥」とほぼ等しい。
※廖落(りょうらく)≒寥落

「鏐」:①いしゆみのへり、②こがね。黄金の美しいもの、③しろがね。銀の美しいもの、という意味。一字で「金」と「銀」を表せる便利な文字だが、熟語の用例がまったくない。読みは「リュウ」または「リョウ」。

③リク系

「戮」:「殺戮」などで使うように「ころ(す)」という意味で使われるが、「あわ(せる)」とも読む。
※殺戮(さつりく):人を残酷に殺すこと。特に、多くの人間をむごたらしく殺すこと。
※戮辱(りくじょく):①ひどくはずかしめる。②恥。恥辱。
・戮力同心(りくりょくどうしん):物事を心を一つにして行うこと。物事を強力して行うこと。

「勠」:力を「あわ(せる)」という意味。ほとんど「戮」でも代替できるが、字面としてはこちらの方が「あわせる」という雰囲気は伝わりやすいか。
※勠力(りくりょく):力を合わせること。

④その他例外

(1)キュウ

「摎」:くびる、くくるという意味があるほか、「まつ(わる)」、めぐるとも。前者は「絞」、後者は「繆」と結びつくが、漢検漢字辞典では用例なし。「キュウ」が代表的な読みとされているものの、漢字源では「摎殺/絞殺(こうさつ)」など「コウ」と読む用例しかない。

「樛」:曲がりくねるという意味合いが主。その他「つが/とが(=栂)」とも。
※樛木(きゅうぼく):枝が曲がりくねってもつれている木。

(2)コウ

「膠」:「にかわ」といい、動物の皮・骨などを煮込んで、冷やして固めた接着剤のようなものを指す。
・膠着(こうちゃく):①にかわでつけたように、しっかりとつくこと。②状況が固定して進展しないこと。「膠著」とも。
・膠柱(こうちゅう):物事や規則などに囚われ過ぎて融通が利かないこと。「琴柱(ことじ)に膠(にかわ)す」から出た語。琴柱を膠で固定すると音調を変えることができなくなることから。
・膠漆(こうしつ):にかわとうるし。親密な間柄。硬い友情。「―の交わり」

(3)ロウ

「醪」:「もろみ(=諸味)」とは、醸造してかすを搾り取る前の酒や醤油のこと。
※村醪(そんろう):漢字源に掲載。いなかづくりの酒。
※濁醪(だくろう):にごり酒。 どぶろく。 もろみ。
・醪酒(もろみざけ):醸造して、まだ、かすをこしていない酒。にごり酒。どぶろく。