パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「告」です。
なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。
「告」を含む漢字一覧
漢字 | 音読み | 訓読み | 熟語など | |
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1 | 告 | コク | つ(げる) | 報告(ほうこく)・告訴(こくそ) |
2 | 酷 | コク | きび(しい)・むご(い)・はなは(だしい) | 残酷(ざんこく)・酷似(こくじ) |
3 | 梏 | コク | てかせ・しば(る)・みだ(す) | 桎梏(しっこく) |
4 | 鵠 | コウ コク | くぐい・まと・しろ(い) | 正鵠(せいこく)を射る・鴻鵠(こうこく) |
5 | 浩 | コウ | ひろ(い)・おお(きい)・おお(い)・おご(る) | 浩瀚(こうかん)・浩然(こうぜん) |
6 | 晧 | コウ | しろ(い)・あき(らか) | |
7 | 皓 | コウ | しろ(い)・きよ(い)・ひか(る) | 皓歯(こうし) |
8 | 窖 | コウ | あなぐら・ふか(い) | 地窖(ちこう)・窖窯(あながま) |
9 | 誥 | コウ | つ(げる)・ふ(れ)・みことのり | 誥命(こうめい) |
10 | 靠 | コウ | よ(る)・もた(れる)・たが(う) | 靠天(こうてん)・靠(もた)れる |
11 | 造 | ゾウ | つく(る)・いた(る)・な(る)・はじ(める)・みやつこ | 造詣(ぞうけい)・造次顛沛(ぞうじてんぱい) |
12 | 慥 | ゾウ ソウ | たし(か) | 慥慥爾(ぞうぞうじ) |
①コク系
「告」:常用漢字。「つ(げる)」、知らせるという意味で「告白」「通告」、訴えるという意味で「告訴」「被告」など。
・告愬(こくそ):事情を申し述べ、訴えを出すこと。
・告天子(ひばり/こくてんし):ヒバリ科の小鳥。「雲雀」とも。
「酷」:常用漢字。意外にも「ひど(い)」の訓読みが掲げられておらず、「酷い」と書いた場合は「むご(い)」と読む。文字通りにむごい、ひどいという意味のほか、「はなは(だしい)」、程度が大きいという意味で「酷似」「酷暑」のようにも使う。
・酷評(こくひょう):手厳しく批判すること。またその評価。
※苛酷(かこく):むごいこと。非常に厳しいこと。
「梏」:「てかせ」と読み、罪人の手にはめて自由を奪う刑具という意味。
※桎梏(しっこく):①足かせと手かせ。②自由をさまたげるもの。「家庭が―となることもある」
「鵠」:「くぐい」とはハクチョウの古名。または大型の水鳥のこと。「まと」という意味では「正鵠(せいこく)」という表現が比較的有名。漢検漢字辞典では「コウ」という読みが主とされているが、用例は「コク」と読むものばかりなので、ここでは「コク系」とした。
※正鵠(せいこく)を射る:物事の急所、核心を突く。「正鵠」は慣用的には「セイコウ」とも読めるとあるが、「セイコク」と読む方が一般的でしょう。
※燕雀(えんじゃく)安んぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知らんや:小人物には、大人物の雄大な志が分からないというたとえ。「鴻鵠」は大きな鳥の意で、大人物のたとえ。
②コウ系
「浩」:「ひろ(い)」や「おお(きい)」という意味で用いる。
・浩瀚(こうかん):①水などの広大な様子。②書物のページ数や巻数の多いこと。
・浩然(こうぜん):心が広々としていて、大きいさま。
・浩然(こうぜん)の気を養う:ひろく豊かで、のびのびした心持ちになるたとえ。
・浩蕩(こうとう):広大な様子。転じて、志の奔放なさま。
「晧」:「しろ(い)」「あき(らか)」と読む。主に日の出が明るいという意味。なお、漢字源では「皓」の異字体として掲載されているが、漢検漢字辞典では別字扱い。意味も似通ってはいるが、訓読みに違いがある(「晧」は「あき(らか)」と読むが、「皓」では読みとして掲げられていない。一方で「皓」では「きよ(い)」「ひか(る)」という訓読みがある)また、熟語の用例がこちらにはないため、書取りの出題であれば「皓」を書くようにすべきか。
「皓」:白く輝く、という意味の字。「晧」と似るが漢検漢字辞典では別の字扱い。
・皓歯(こうし):白くて綺麗な歯。転じて、美人。「明眸―」
「窖」:訓読みは「あなぐら」で、物を蓄えるための穴、室という意味。
・窖窯(あながま):焼き物用のかまの一形式。斜面を掘り下げ、上部を土でおおったもの。「穴窯」とも。
※地窖(ちこう):地面を掘った穴。 穴ぐら。
「誥」:「つ(げる)」と読み、上の人から下の者に申し渡す、教え戒めるという意味。
※誥命(こうめい):漢字源に掲載。①天子が下の者につげ、また、命ずる文。みことのり。②朝廷が爵位を与えるとき、天子が下す言葉。
※誓誥(せいこう):漢字源に掲載。主君が下の者に対して、ちかったり告げたりする文章。
「靠」:「もた(れる)」という訓読みで問われることが多い字。音読みの「コウ」は漢検漢字辞典では用例がなく、漢字源でも文中に「靠天(こうてん)」が紹介されるのみ。「たが(う)」という読みもあるが熟語的な使用法の掲載はない。
※靠天(こうてん):天にもたれる。天に任せる。
③ゾウ系
「造」:常用漢字。①作る、生み出すという意味で「造営」「創造」、②至る、極めるという意味で「造詣(ぞうけい)」。また、③成る、成就する、④はじめる、はじめ、⑤にわか、あわただしいという意味もある。④では「造端(ぞうたん)」、⑤では「造次(ぞうじ)」など。
・造詣(ぞうけい):学問や技芸などの分野で、深くすぐれている知識や理解。
・造酒児/造酒童女(さかつこ):大嘗祭(だいじょうさい)のとき、斎場で神に供える神酒(みき)の醸造に従事する少女。
・造次顛沛(ぞうじてんぱい):とっさの場合。あわただしいとき。緊急のとき。
・造畢(ぞうひつ):建設し終えること。特に、神社仏閣などにいう。「―供養」
・造酒司(みきのつかさ):律令制で、宮内省に属し、酒や酢などの醸造を司った役所。
※造端(ぞうたん):漢字源に掲載。物事の最初となる。物事がそこからはじまること。
※国造(くにのみやつこ):古代の地方官。地方の豪族が世襲制で任命され、その地方を統治した。
※伴造(とものみやつこ):大和朝廷に奉仕した品部(しなべ)の統治者。品部は朝廷に貢物を納めたい労働奉仕などをした世襲の集団。
「慥」:「たし(か)」という用例が主。漢検漢字辞典では音読みとして「ゾウ」「ソウ」が掲載されているが、いずれも熟語の用例がない。
※慥慥爾(ぞうぞうじ):漢字源では、言ったことをすぐに実行するさま。国語辞典オンラインによると、情け深く、誠実な様子という意味。