【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「僉(㑒)」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「僉(㑒)」です。

見慣れない形かもしれませんが、「漢検」の「検」の右側、といえばわかりやすいでしょうか。この旧字体が「僉」です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「僉(㑒)」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1
ケンつま(しい)・つづま(やか)倹約(けんやく)・恭倹(きょうけん)
2
ケンつるぎ剣呑/険呑(けんのん)・剣幕/見幕/権幕(けんまく)
3
ケンけわ(しい)険隘(けんあい)・危険(きけん)・邪険(じゃけん)
4
ケンしら(べる)・あらた(める)検査(けんさ)・点検(てんけん)
5
ケン
ゲン
しるし・あかし・ため(す)実験(じっけん)・霊験(れいげん/れいけん)
6ケンけわ(しい)嶮峻(けんしゅん)・嶮岨(けんそ)
7ケンほお・かお紅臉(こうけん)
8ケンまぶた眼瞼(がんけん)・花瞼(かけん)
9
ケンあく・しおけ石鹼(せっけん)
10センみな僉議(せんぎ)
11センふだ題簽(だいせん)
12レンこばこ・くしげ鏡匳(きょうれん)・香匳(こうれん)
13レンおさ(める)・あつ(める)・ほぼ収斂(しゅうれん)・斂葬(れんそう)
14レンみぎわ・う(かぶ)泛瀲(はんれん)
15カンのぞ(む)・ねが(う)・あた(える)歛丐(かんかい)
16しんし籡(しんし)張り

「ケン」と読むパターンが多いですが、「セン」「レン」や、例外として「カン」と読むなど、違うパターンもチェックしておきましょう。「斂(レン)」と「歛(カン)」は字体も似通っていて混同しやすいので、特に書く場合は注意が必要。

①ケン系

」:常用漢字。訓読みの「つま(しい)」「つづま(やか)」とあるように、質素という意味で「倹約(けんやく)」や「節倹(せっけん)」、へりくだるという意味で「恭倹(きょうけん)」などの用例がある。
・倹約(けんやく)と吝嗇(りんしょく)は水仙(すいせん)と葱(ねぎ):倹約とケチは、見かけはスイセンとネギにように似たところがあるが、実態は全く異なるものである。

」:常用漢字。訓読みは「つるぎ」だが、「ケン」という音読みでも通じる。つるぎのように先がとがったもの、という意味合いでは「剣山(けんざん)」のようにも使う。
・剣戟(けんげき):①つるぎとほこ。転じて武器。②刀を用いての切り合い。
・剣呑/険呑(けんのん):あぶなっかしいこと。危険なさま。「―な話に用心する」
・剣橋(ケンブリッジ):イギリスロンドンから北へ約80kmほどのところにある学園都市。ケンブリッジ大学がある。
・剣幕/見幕/権幕(けんまく):怒りや興奮でゆがんだ、ものすごい顔や激しい態度。

」:常用漢字。「けわ(しい)」という意味のほか、危ないという意味で「危険」「冒険」、刺々しいや腹黒いという意味では「険相(けんそう)」「陰険」など。
・険隘/嶮隘(けんあい):土地がけわしく狭いこと。また、その場所。
・険相(けんそう):人相や顔つきが刺々しく恐ろしいこと。また、そのようなさま。

」:常用漢字。「しら(べる)」または「あらた(める)」という意味で、「検挙」「検閲」、取り締まるという意味で「検束(けんそく)」のように使う。「漢字能力検定」でも用いる字で、検定とは一定の基準を設けて検査し、合否・等級・資格などを定めるという意味。
・検非違使(けびいし/けんびいし):平安時代、都の治安、検察、裁判などを担当した役人。令外官(りょうげのかん)の一つ。
・検見/毛見(けみ):昔、米の収穫前、役人が年貢率を決めるために稔り具合を調べたこと。
・検校(けんぎょう):①昔、盲人に与えられた最上級の官名。琵琶・管弦や按摩(あんま)・鍼(はり)などを業とした盲官(もうかん)の長。②寺社の事務や僧尼を監督すること。また、その役職名。なお、「ケンコウ」と読めば、調べ考える、取り調べるという意味になる。

」:常用漢字。「実験」「体験」のようにためす、しらべるという意味で使われることが多いが、もう一つの意味は「しるし」、「あかし」や効果など。
※修験道(しゅげんどう):山野に修行し、霊験を得ようとする宗教。開祖は役小角(えんのおづの)。日本古来の山岳信仰に、仏教や神道が習合してできたもの。
※霊験(れいげん/れいけん):熱心な祈りに対して神仏が示す感応。ご利益(りやく)。「深山の―あらたかな水を飲む」

「嶮」:文字通り「けわ(しい)」という意味だが、漢検漢字辞典での見出し語は全て「険」で書き換えられる。書くことより、読めることが重要な字か。
・嶮峻/険峻(けんしゅん):山が高く険しいこと。また、その場所。
・嶮岨/険阻(けんそ):道などがけわしいさま。また、その場所。

「臉」:「ほお(=頬)」と読むほか、「瞼」と混同、拡大され、「かお(=顔)」という意味も持つ。漢検漢字辞典では見出し語がない。
※紅臉(こうけん):ほんのりと赤い顔。
※睡臉(すいけん):漢字源に掲載。ねむりから覚めたときのぼんやりした顔。

「瞼」:「まぶた」と読み、字義もそのまま。
※眼瞼(がんけん):眼球の上下を覆い、角膜を保護する皮膚のひだ。まぶた。(広)
※花瞼/花臉(かけん):紅潮した美しいまぶた。美人のまぶた。(広)

「鹼」:「あく(=灰汁)」と読み、ハイを水に溶かした上澄みのこと。また「しおけ」とは、地質に含まれている塩分のこと。熟語としては「石鹼(せっけん)」がほぼ唯一。

②セン系

「僉」:このパーツ単体では「セン」と読むが少数派。「みな(=皆)」、ことごとくという意味を持つ。
・僉議(せんぎ):多くの人で評議すること。多人数で相談すること。

「簽」:見出しなどを書いてつける「ふだ」、または標題という意味。
※題簽(だいせん):①書名・巻数などを記して和漢書の表紙に貼付した細長い紙片、あるいは布片。貼り外題(げだい)。外題紙(げだいがみ)。(広)

③レン系

「匳」:「こばこ」「くしげ」など、化粧道具を入れる箱の意味。
※鏡匳(きょうれん):かがみばこ。鏡匣(きょうこう)。(広)
※香匳(こうれん):①化粧品や化粧道具を入れる箱。②神仏に供する香を入れる箱。
※香匳体(こうれんたい):漢詩で、男女の情愛を詠じた艶麗な詩風。晩唐の詩人韓偓(かんあく)の「香匳集」に倣ったもの。(広)

「斂」:引き締めるという意味の「収斂(しゅうれん)」が最もメジャーな用例か。その他の意味としては、①おさめる、あつめる、集めとる、取り立てるという意味で「苛斂(かれん)」、死者の亡骸を納めるという意味で「斂葬(れんそう)」など。
・斂葬(れんそう):死者を、地中に葬りおさめること。屍を埋め葬ること。
・収斂(しゅうれん):①引き締まって縮まること。②税を取り立てること。③穀物などを取り入れること。収穫。④数学で、変数の値がある一定の数に限りなく近づくこと。収束。

「瀲」:水が満ち溢れるさま、波が連なるさま。または「みぎわ(=水際)」や渚という意味。見出し語はなし。
※泛瀲(はんれん):水波。
※瀲灎/瀲灔(れんえん):漢字源に掲載。「灎/灔」は漢検対象外。①水の満ち溢れるさま。②さざ波のしきりに動くさま。また、波に日が映じてきらめくさま。

④その他例外

「歛」:「斂」に似るが旁が違い、こちらは「僉」に「欠」がつき、読みは「カン」。訓読みのとおり、「のぞ(む)」「ねが(う)」という意味だが、物乞い、物欲しそうにするという意味合いが強い。
※歛丐(かんかい):漢字源の解説に登場。物をもらおうとする乞食。

「籡」:漢検ではいわゆる国字として登場する字で、読みは「しんし」。布の染色や洗い張りのときに用いる、両端に針のついた竹製の串を「しんし」と呼ぶ。