「漢検四字熟語辞典」に登場する漢検1級配当外漢字

漢検

「漢検四字熟語辞典」はその名の通り公式が出している辞典で、見出し語の下に漢検の配当級が記されているなど、試験対策に便利な一冊です。

1級対策においては、この辞典の1級配当漢字が含まれる四字熟語を網羅していくのが得点に繋がりやすいと思いますが、中には1級配当外の漢字が含まれる四字熟語も散見されます。

当然ですが、これらの熟語が試験に出題されることは(おそらく)ありませんので、試験対策として見ると不要な存在です。

今回はそんな四字熟語を集めてみました。

なお、第1版ではこれらも「1級」配当と記載されややこしかったのですが、第2版では1級配当外漢字が含まれる熟語については級の表示が消えていますので、区別は容易になりました。

(左)第1版、(右)第2版。第2版では見出し語の下の「1級」表記が消えています。「『卞和』を『べんわ』と読み誤らない」などといかにも試験対策風なことを書いていますが、「卞」が1級配当外なので出題されることはありません。

1級配当外漢字が含まれるもの

赤字が配当外漢字。該当漢字はもちろん、それ以外の部分が出題されることもほぼないかと思います(例えば、問題に「〇〇蓊勃」と出て、語群から「あんこう」を選んで「暗香」と書かせる問題も出題される可能性がほとんどない、ということです)。

暗香 あんこうおうぼつ どこからともなく香りが盛んに漂いくるさま。
遺簪墜 いしんついく 日ごろ使い慣れたものに愛着をもつたとえ。
飛肉 うかくひにく 小さなものでも数多く集まれば大きな力になるということ。
水隠士 えいすいのいんし 尭帝のとき、潁水のほとりにいた隠者の許由のこと。
円鑿方 えんさくほうぜい 物事がうまくかみ合わないこと。
繊懦弱 おうせんだじゃく 身体が弱く細くて気が弱いこと。
瑰意 かいいきこう 考え方や行いが、並みの人と違ってすぐれていること。
荷衣 かいけいたい 世俗を超絶している人の衣服のこと。
禍福糾 かふくきゅうぼく 福あれば禍有りということ。
汀蘭 がんしていらん 花が薫り高く咲き、葉が青々と茂っているさま。
坎井之 かんせいのあ 広い世間を知らないで、自分だけの狭い見識にとらわれること。
崎嶇坎 きくかんか★ 不遇で世渡りに大変苦労すること。
綺襦 きじゅがんこ 富貴の家の子弟をいう。
佶屈 きっくつごうが 文章が難解で堅苦しく、理解しにくいこと。
蒿凄愴 くんこうせいそう 強い香りを放っていたましくすさまじいこと。
閨英 けいえいいしゅう 婦人のこと、すぐれた女性のたとえ。
趾適 げっしてきく 本末を転倒して無理に物事を行うこと。
羹藜含 こうれいがんきゅう 粗末な食べ物のたとえ。
告朔 こくさくきよう 実を失って、形式だけが残っているたとえ。
虎擲竜 こてきりょうだ 英雄が戦うたとえ。
犀舟頸 さいしゅうけいしゅう 堅牢な船と強いかい。
采椽不 さいてんふたく 質素な建物のこと。
残膏 ざんこうしょうふく すぐれた人物や詩文の形容。
山肴野 さんこうやそく 山野の肉や野菜。
鱗潜翼 しゅうりんせんよく 志を抱いて時期の到来をじっと待つたとえ。
裳竹笥 しょしょうちくし 娘の嫁入り支度を謙遜していう語。
斐貝錦 せいひばいきん 巧みに言い立てて人を罪に陥れるたとえ。
截趾適 せっしてきく 本末を転倒して無理に物事を行うこと。
之疑 せっぷのぎ 確かな証拠もないのに疑いをかけること。
前跋後 ぜんばつこうち 進退きわまり、どうにもならない困難な状況に追い込まれること。
桑間 そうかんぼくじょう 淫乱な音楽のこと。
之音 そうぼくのおん 淫乱な音楽のこと。
大沢 だいたくらいくう 大小がひどくかけ離れていること。
厲風発 たくれいふうはつ 議論がうまく風のように早く口から出ること。
蜩翼 だふちょうよく 互いに持ちつ持たれつの関係にあること。
断港絶 だんこうぜっこう 他から孤立した辺鄙なところのこと。
鳥革 ちょうかくきひ 家の作りが美しくて立派なこと。
直言骨 ちょくげんこっこう 遠慮しないで直言し、意志強固で人に屈しないこと。
ちょとつきゆう◆ いのししのように勇ましい武者のこと。
雨尤雲 ていうゆううん 男女の情交のこと。
袍恋恋 ていほうれんれん 昔馴染みを忘れない友情の厚いことのたとえ。
之派 てんこうのは 皇室、皇族のこと。
地垠 てんこんちぎん 天の門と地の果て。
刀鋸鼎 とうきょていかく 昔の刑罰の道具。
洞見 どうけんちょうけつ 隠れたわかりにくい障害をはっきり見抜くこと。
跿科頭 とくかとう 勇猛な兵士のこと。
紅塵中 なんこうじんちゅう★ 繁華な都会の中。
買妻恥 ばいさいちしょう 夫を棄てた妻がその後の結婚を恥じること。
還珠 ばいとくかんしゅ 外見の立派さに囚われ、真価を見失ってつまらないものを尊ぶこと。
橋驢上 はきょうろじょう 詩を造るのに絶好な場所のこと。
八元八 はちげんはちがい 心が清く正しくて、徳の高い人のこと。
靡衣 びいとうしょく 美しい着物を好んで一時の食を貪って将来のことを考えないこと。
百舎重 ひゃくしゃちょうけん 困難を乗り越えて遠路をいくこと。
末之功 ひょうまつのこう ほんのわずかな功績のこと。
夫婦 ふうふはんごう 夫婦は一つのものを半分ずつで、両方合わせて初めて完全になるということ。
和泣璧 べんかきゅうへき 正しくすぐれた才能や業績が世に認められずに嘆くことのたとえ。
鳳凰在 ほうおうざいど すぐれた人材が地位に恵まれず民間に埋もれていること。
円鑿 ほうぜいえんさく 物事がうまくかみ合わないこと。
暴戻恣 ぼうれいしき 横暴で残忍な人物の形容。
上之音 ぼくじょうのおん 淫乱な音楽のこと。
之守 ぼくてきのまもり 自分の説などを堅く守って改めないこと。
砥礪 まろうしれい 知らず知らずのうちに、物が減ってしまうたとえ。
何之郷 むかのきょう 何もなく、果てしなく広いところ。
冥行 めいこてきしょく 学問をするのに、その方法を知らないことのたとえ。
尤雲 ゆううんていう 男女の情交のこと。
竜舟鳳 りょうしゅうほうぼう 天子の乗る船。また美しい船。
虎擲 りょうだこてき 英雄が戦うたとえ。
竜蟠 りょうばんげんし 聖人も民間にあれば俗人に侮られるたとえ。

★「崎嶇坎(きくかんか)」と「紅塵中(なんこうじんちゅう)」は、それぞれ「崎嶇坎」、「紅塵中」への書き換えが可能で、書き換え後は配当漢字のみの構成になります。出題される可能性はゼロではありませんが、出た場合はかなり意地の悪い問題でしょう。

◆「勇(ちょとつきゆう)」の「」は「猪」の異字体とされているので、書き換えは可能と思いますが、漢検四字熟語辞典には書き換え可能である旨の注釈がない、なんとも不思議な熟語です(ちなみに隣には「猪突猛進」が見出し語に並んでいますが、こちらはしっかり「猪」)。いずれにせよ「」が配当外漢字であることに変わりはないので、あまり気にする必要はないかも知れません。

1級配当外の読みが含まれるもの

赤字が配当外の読み。見出し語が配当外の読みのものをまとめました。こちらも出題可能性は皆無に等しいかと思います。

阿爺 あやがん  物事の見分けのつかない愚か者のこと。
引縄 いんじゅんへいこん 力を合わせて他を排斥すること。
神荼 うつりつしんと  門を守る神のこと。
翫歳 がんさいけいじつ  何もしないで怠惰な月日を過ごすこと。
身滅智 しんめっち  身も心も無にして悟りに達する境地をいう。
一明三 いちみょうさん  ひとつのことを指し示せば三つのことを知り悟る意。
ざんさいさい  喪服の種類。
上漏下湿 じょうろうかしゅう  貧乏なあばら家のさま。
神荼鬱 しんとうつりつ  門を守る神のこと。
方便  ぜんぎょうほうべん  機に応じた方法にきわめて巧みなこと。
たいばくしょうばく  文化程度の低い野蛮人のような為政者のこ と。
悶絶 もんぜつびゃく 転げまわってもだえ苦しむこと。
摩一黙  ゆいまいちもく 多弁より沈黙が勝っていることのたとえ。

終わりに

以上、漢検四字熟語辞典に掲載されていながら、漢検配当外の漢字が含まれる熟語でした。

最新第2版でこそなくなりましたが、第1版ではこれらもすべて「1級」配当と書かれているので、勉強する際は出題可能性が低いことを留意する必要があります。

間違いや漏れがありましたら、適宜修正していこうと思います。