漢字には「画数」というものがあります。
言わずもがな、何筆書きで書けるか、という意味ですね。
学生の頃、漢字テストで問われたことや、漢字練習帳などで見たことがある方も多いかと思います。
今回は漢字の画数に焦点を当てて、その数が多いものをご紹介します。
目次
教育漢字で最も多い画数:20画
教育漢字とは、平たく言うと小学校で習う漢字のことですが、このうち最も画数が多いものは20画で「護」「競」「議」の3字があります。
「護」は「ゴ」と読み、「看護」「保護」「護衛」など「まもる」と言う意味合いで用いますね。「まも(る)」とも読みますが、これは表外読みです。
「競」は「ケイ」「キョウ」と読みます。「競争」「競馬」「競売」のように使います。なお、「きそ(う)」は中学校、「せ(る)」は高校の範囲で、小学校では訓読みは習いません。
「議」は「ギ」と読み、「議論」「会議」「抗議」のように、相談や意見といった意味で使われます。訓読みは表外読みで「はか(る)」です。「図る」に近い用法ですね。
人名用漢字で最も多い画数:25画
人名用漢字とは、戸籍に登録できる漢字のうち、常用漢字に含まれないものを指します。
このうち最も画数が多いものが25画の「廳」、次いで24画に「鷹」「鱗」「麟」「鷺」「釀」「讓」があります。
「廳」は「庁」の旧字体であり、また24画の「釀」「讓」もそれぞれ「醸」「譲」の旧字体になるため、文字として代替できないものとしては「鷹」「鱗」「麟」「鷺」が最も画数の多い字ということになりそうです。
「鷹」は「たか」「オウ」と読み、熟語では「鷹揚(おうよう)」等に使われます。
「鱗」は「うろこ」「リン」と読み、「魚鱗(ぎょりん)」と言う熟語があります。
「麟」は「リン」と読み、「麒麟(きりん)」がほぼ唯一の用例。なお、訓読みとして一字で「きりん」と読ませることもできます。
「鷺」は鳥の名前で「さぎ」です。音読みの「ロ」は「鴉鷺(あろ)=カラスとサギ」「朱鷺(しゅろ/とき)」など、極めてマイナーな用例があるのみ。
常用漢字で最も多い画数:29画
常用漢字でのトップは「鬱」です。
2010年の常用漢字表改定に伴いダントツの首位となりました。漢字全体で見ても30画に迫る勢いで、パーツや構成も類似のパターンがなく独特なため、難読漢字の代表格と言える字です。
「鬱」は「ウツ」と読みますが、これは音読みであり、訓読みとしては「さか(ん)」「しげ(る)」「ふさ(ぐ)」があります。
「鬱病」「憂鬱」など、「ふさ(ぐ)」という意味合いで使われるのが多いですが、「鬱蒼(うっそう)とした」という場合は「しげ(る)」という意味になります。
ちなみに旧常用漢字表では「鑑」の23画が最高画数でしたので、「鬱」の突出ぶりが伺えます。
漢検配当漢字で最も多い画数:33画
漢検配当漢字に範囲を広げると、33画の「麤」が最高画数。1級配当の漢字です。
「麤」は「ソ」「あら(い)」「おお(きい)」「くろごめ」「ほぼ」と読み、「麤笨(そほん)=大まかで細かい点まで行き届いていないこと」という意味で使われます。
画数こそ多いものの、「鹿」を3つ重ねただけなので数字ほどの難しさはないかも知れませんね。
それ以下では30画に「鸞」、29画に常用漢字の「鬱」と、「驪」「爨」が続きます。「鬱」以外はいずれも漢検1級配当です。
「鸞」は鎌倉時代に浄土真宗を開いた「親鸞(しんらん)」で有名ですね。逆に言うとこれくらいしか使途がありません。
「驪」は「レイ」「くろうま」等と読み、「驪馬(れいば)=黒いウマ」等の用例がありますが、かなりマイナーな漢字です。
「爨」は「サン」「かし(ぐ)」「かまど」と読み、「飯盒炊爨(はんごうすいさん)」が比較的一般的な用法。小中学校時代にやった方も多いと思いますが、非常に難しい漢字であるため「飯盒炊飯(はんごうすいはん)」のように書き換え(勘違い?)されているケースも多いような気がします。
JIS X 0213で最も多い画数:34画
「JIS X 0213」とは、日本工業規格(JIS)が定める日本語の情報処理のための規格の一つです。
いわゆる「JIS第一水準」と表現されるものですが、この「JIS X 0213」では対象漢字が大幅に増補され、「JIS第三水準」「JIS第四水準」が定められるに至りました。漢検配当が概ね「JIS第二水準」までなので、それよりも倍近い数の文字が収録されています。
そんな「JIS X 0213」で最高画数は34画で「䯂」。「驫」の下に「木」という構成です。
音読みで「シン」とあり、意味としては馬が多いさま、さかんなさま、という意味を持ちます。
辞書などでも熟語の用例はなく、使うことは極めて稀でしょう。
その他の多い画数
①䨻(雷×4):52画
「雷」を2×2に4つ記載した漢字です。漢字辞典オンラインに掲載されているものの中では最大の52画を誇ります。
読みは「ホウ」「ビョウ」ですが特に用例はなし。
②ビャンビャン麺の「ビャン」:56画~58画
「ビャンビャン麺」の「ビャン」の漢字表記で、画数は表記によって若干の揺れがありますが「56画~58画」とされています。
近年「ビャンビャン麺」が注目を浴び、それに伴って(または相俟って)有名になった漢字で、外食チェーンのバーミヤンの幟にも表記されていたことがあります。
とは言え通常のフォントでは表記できないため、ブログ主の直筆をここでは掲載しています。
③「龍×4」「興×4」:64画
①と同様、同一漢字を4つ重ねるパターンの「𪚥(龍×4)」「𠔻(興×4)」です。
「𪚥(龍×4)」は「テツ」「テチ」と読み、口数が多いさまを表す模様。別の典拠によれば「ショウ」と読み、「讋(ショウ)」と同義に用いられるケースがあるそうです。
「𠔻(興×4)」は詳しいことが分かっていない字のようですが、ものによって「セイ」と読むとされています。
いずれにしても一般に使用することはないでしょう。
④たいと、おとど:84画
「雲×3の下に龍×3」で、総画数は84画にも及ぶ壮大な漢字です。
書くのは一苦労ですが、見知ったパーツを並べるだけなので案外覚えやすいのかも知れませんね。
よみは「たいと」「おとど」と読み、日本人の苗字または名前に用いられていたとされる国字(和製漢字)です。
典拠不明瞭なこともあり、用例があるとは言い難い字ではありますが、「画数が最も多い漢字」として都市伝説的に著名な字ではあると思います(Wikipediaにも専用記事あり)。
終わりに
今回は画数が多い漢字を列挙してみました。
ネット上にはこれより画数の多い漢字を紹介しているサイトも見かけますが、ある程度出処が分かっているもの、用例があるものに限定して紹介をしました(一部怪しいものも含まれますが)。
この中でも「ビャンビャン麺」の「ビャン」は、日常で見かけ得る最大画数の漢字ではないかと思います。
本来、漢字は使いやすくされるために画数が減らされる傾向にありますが、複雑すぎるが故に耳目を集め、却って使われるようになったというのは面白いと思います。
こんな調子で、色々な難読漢字たちが日の目を浴びることを願うところでもあります…
おすすめ資料
漢字学習を進めたい方にお勧めの辞書は以下から!
1.漢検 漢字辞典
2.難読漢字辞典/三省堂
3.何でも読める難読漢字辞典/三省堂