「欠缺(けんけつ)」という熟語の不思議

漢検以外

「欠缺」という熟語はご存じでしょうか。
読み方は「けんけつ」。法律用語として用いられることがあり、要件を満たしてないことを指して、「法の欠缺」などと言ったりします。

この「欠缺(けんけつ)」ですが、「缺」という字は実は旧字体です。

通常、人名や地名などでなければ旧字体を堅持する理由はないのですが、この熟語の構成が特殊であるがゆえに、一般の熟語であるにも関わらず、その一部が旧字体のまま使われています。

では、どのような構成なのでしょうか。

「欠缺」の構成

結論から言うと、

・「欠」は「ケン」と読む漢字
・「缺」は「ケツ」と読み、常用漢字の「欠(ケツ)」の旧字体

です。ひとつずつ見ていきましょう。

欠とは?

「欠」は通常、「欠陥」や「欠点」のように「ケツ」と読むのが通常です。

ですが、この字は「ケン」と読みます。
当て読みではなく、通常の音読みとして「ケン」という読み方があり、この熟語では「ケン」と読ませているに過ぎません。

後で述べますが、私たちがよく目にする「欠(ケツ)」は、もともとは別の形をしていた(旧字体があった)のですが、新字体になった結果、「欠(ケン)」という別字と同形になってしまったんですね。つまり、「欠(ケツ)」と「欠(ケン)」見た目が一緒であるものの、ルーツが異なる他人同士なのです。

缺とは?

「缺」は馴染みがない漢字ですが、実はこれこそが「欠(ケツ)」の旧字体です。

もともとは「缺」が「欠(ケツ)」であり、「缺陷(=欠陥)」「缺点(=欠点)」のように使っていました。

なぜ「欠缺」と書くのか?

以上から、ではなぜ旧字体をわざわざ使うかと言えば、それは「欠(ケン)」「欠(ケツ)」を区別するためです。

旧字体を使わないで書けば、「欠欠」と書くほかありません。
しかし、これでは同じ字が続いてしまい、それぞれが別の意味の字として読み方が違うものとは認識できないでしょう。
それぞれが別の字扱いのため、「欠々」のような書き方もできません。「欠(ケン)」と「欠(ケツ)」という異なる漢字の組み合わせであるため、「々」(同じ)ではないんですね。

他方で、常用漢字以外の文字は混ぜ書きにするというルールに沿えば「けん欠」と書くこともできますが、熟語の一部が平仮名になると読みづらかったり、また専門用語として用いられることが大半であることもあってか、今日に至るまで「欠缺」という表現が生きています。

終わりに

「欠缺」の語構成について簡単に解説しました。

新字体になった結果、もともとあった別の字と同じ字体になってしまうケースは散見されますが、それが熟語の中で同居していた結果、新字体に合わせてしまうと見た目の区別ができなくなるため、いまだに旧字体が現役で用いられる、という極めて稀有なパターンでした。

字体の衝突については、以下でもまとめていますので是非ご参照ください。

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