パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「肙(口+月)」です。
「絹」の右側の「口の下に月」のパーツですね。
なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。
「肙(口+月)」を含む漢字一覧
漢字 | 音読み | 訓読み | 熟語など | |
---|---|---|---|---|
1 | 絹 | ケン | きぬ | 絹紬(けんちゅう)・絹糸(けんし/きぬいと) |
2 | 涓 | ケン | しずく・わず(か) | 涓滴(けんてき) |
3 | 蜎 | ケン | うつく(しい) | 蟬蜎(せんけん) |
4 | 狷 | ケン | かたいじ | 狷介固陋(けんかいころう) |
5 | 羂 | ケン | わな・くく(る) | 羂索(けんさく) |
6 | 鵑 | ケン | ほととぎす | 杜鵑(とけん/ほととぎす)・杜鵑花(とけんか/さつき) |
7 | 娟 | エン ケン | うつく(しい)・しな(やか) | 娟雅(えんが/けんが)・嬋娟(せんえん/せんけん) |
8 | 悁 | エン ケン | いか(る)・あせ(る) | 悁恚(えんい)・悁急(えんきゅう) |
9 | 捐 | エン | す(てる)・あた(える)・か(う) | 捐館(えんかん)・出捐(しゅつえん)・捐納(えんのう) |
※基本的には「ケン」と読みますが、「エン」と読むパターンがあるので注意が必要です。
①ケン系
「絹」:常用漢字。このパーツを含む文字は「絹」と同じく「ケン」と読み、そうでない例外を重点的に覚えるのが得策でしょう。
・絹紬(けんちゅう):サクサン(ヤママユガ科のガ)の繭からとった糸で織った薄地の織物。繭紬(けんちゅう)とも。
・絹糸(けんし/きぬいと):蚕の繭から採った繊維を精練し、撚り合わせて糸にしたもの。撚糸(よりいと)。
「涓」:「しずく」と読む。
・涓滴(けんてき):しずく。水のしたたり。転じて小さなもの。僅かなもの。
「蜎」:美しいという意味で、訓読みも同じ。見出し語はない。
※蟬蜎(せんけん):うつくしいさま。
「狷」:訓読みは「かたいじ」(=片意地)。心が狭い、気が短いという意味。
・狷介固陋(けんかいころう):自分の意志をかたくなに守り、世俗を受け入れないさま。また、自我を通して頑固なさま。「固陋」とは視野が狭く、かたくななこと。
「羂」:訓読みで「わな」と読み、そのまま罠や網と言う意味。
・羂索(けんさく):①鳥獣を捕らえる罠。②仏教用語で、仏や菩薩が衆生を救うために用いる、五色の糸をより合わせて作った縄。
「鵑」:1字で「ほととぎす」と読む。用例としては「杜鵑」「杜鵑花」「杜鵑草」の見分け方が重要で、音読みで問われることは少ないか。
※杜鵑(とけん/ほととぎす):ホトトギス科の鳥。
※杜鵑花(とけんか/さつき):サツキの別称。ホトトギスが鳴く頃に咲く花の意から。
※杜鵑草(ほととぎす):ユリ科の多年草のことで、鳥とは別。花の紫斑を鳥のホトトギスの腹の斑点に見立てたことから。
②エン系
「娟」:訓読みは「うつく(しい)」。音読みは「エン」とも「ケン」とも読み、漢検漢字辞典に掲載されている熟語ではどちらで読んでも正解のものしかない。
※娟雅(えんが/けんが):しなやかにうつくしく、上品である。
※嬋娟(せんえん/せんけん):あでやかで美しいさま。なよなよとして美しいさま。なお、「せんけん」と読む場合には「嬋妍」と書いても正解だが、「せんえん」の場合は「嬋娟」しか正解にならない(「妍」が「エン」と読まないため)。漢検等にて書取りで出題された場合は区別が必要。
「悁」:怒るという意味と、焦るという意味がある。「ケン」とも読むが用例がないため、「エン」と読む字として取り扱った。
※悁恚(えんい):腹を立てること。怒ること。
※悁急(えんきゅう):短気。躁急。
「捐」:捨てるという意味がある一方、与える、買うという意味もある。義援金の本来の書き方は「義捐金」であるが、これは与えるという意味。
・捐館(えんかん):身分が高い人の死。住んでいた館を捨てる意味から。
・出捐(しゅつえん):他人を助けるために、金や品物を寄付すること。
・捐納(えんのう):金品を寄付して官職を得ること。中国漢代に財政を補うために、人民に金品を納めさせて官職を与えるなどして優遇したことから。