【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「専(專)」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「専(專)」です。

似たようなパーツに「尃(甫+寸)」がありますが、こちらとは成り立ちが異なる別に字です。
これについては別の記事でもまとめていますので、こちらを参照ください。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「専(專)」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1
センもっぱ(ら)・ほしいまま専門(せんもん)・専横(せんおう)・専断(せんだん)
2センかわら・しきがわら甎全(せんぜん)
3センかわら磚子苗(いぬくぐ)・磚茶(たんちゃ)
4
ダン
トン

タン
まる(い)・かたまり団欒(だんらん)・布団(ふとん)
5タン
セン
まる(い)・まる(める)・もっぱ(ら)摶飯(たんぱん)
6
デンつた(わる)・つた(える)・つた(う)・つて伝授(でんじゅ)・伝統(でんとう)・伝手(つて)
7
テンころ(がる)・ころ(げる)・ころ(がす)・ころ(ぶ)・こ(ける)・まろ(ぶ)・うつ(る)・うた(た)・くるり転嫁(てんか)・転寝(ごろね)
8テンさえず(る)鶯囀(おうてん)
9ジュン
シュン
じゅんさい・ぬなわ蓴羹鱸膾(じゅんこうろかい)

※読みに偏りがなく覚えづらいですが、「専」と同じく「セン」と読むパターンを中心に、そう読まない例外を覚えるのが良いでしょう。むしろ「」との区別が重要かも知れません。

①セン系

専(專)」:常用漢字。「もっぱ(ら)」のとおり、そのことだけをするという意味のほか、独り占めにするという意味がある。
・専横(せんおう):身勝手にふるまうこと。わがまま。
・専断(せんだん):自分だけで勝手に物事を決めること。「擅断(せんだん)」の書き換え字。
・専女(とうめ):①老いた女性。老女。②伊賀専女(いがとうめ)の略、老いた狐の別称。

「甎」:「かわら(瓦)」または「しきがわら(敷瓦/甃)」という意味。
・甎全(せんぜん):世に尽くすこともなく、いたずらに生き永らえること。

「磚」:意味は「甎」とほとんど同じ。漢検漢字辞典では「セン」の用例がなく、2つある見出し語はいずれも熟字訓。
・磚子苗(いぬくぐ):カヤツリグサ科の多年草。日当たりの良い草地に自生する。
・磚茶(たんちゃ):中国やチベット、モンゴルなどで飲まれている茶。緑茶や紅茶を蒸して、かわら(磚)のように圧して固めたもの。「タン」は中国語から。

②タン・ダン系

団(團)」:常用漢字。意味としては①「団扇(だんせん/うちわ)」のように丸いもの、②「団欒(だんらん)」のようにまどか、穏やか、円満、③「集団」「団体」のように集まり、かたまり。「タン」とも読むが用例がない。また、「布団」「水団(すいとん)」のように「トン」と読む場合もある。
・団扇(だんせん/うちわ):扇いで風を起こす道具。
・団欒(だんらん):集まって楽しく語り合うこと。親しい者同士の和やかな会合。
・団居(まどい):①人々が丸く並び座ること。②親しい人々が集まり楽しむこと。

「摶」:丸めるという意味が主で、この意味では「タン」と読む。「もっぱら」という意味では「専」に近く、この場合は「セン」とも読むが用例はない。
※摶飯(たんぱん):握り飯のこと。

③デン・テン系

伝(傳)」:常用漢字。「伝授」や「伝統」のように、つたえる、つたわるという意味で使用例多数。
・伝手/伝(つて):①てづる。縁故。②言づて、人づて。③ついで。便宜。
・伝播(でんぱ):①次々と伝わり広まること。②波動が媒質の中を広がって伝わっていくこと。
・伝馬船(てんません/てんまぶね):荷物を運ぶ手漕ぎの小舟。はしけ。なお、「テン」は音読みではなく、「伝馬船」という熟字訓の扱い。

転(轉)」:常用漢字。ころがす、ころぶのように馴染みのある意味から、「まろ(ぶ)=古語でころぶ、倒れる」「転(うた)た寝」「転(くるり)と回る」等の意外な訓読みも多い字。
・転嫁(てんか):①罪や責任などを他に擦り付けること。②女性が二度目の結婚をすること。再嫁。
・転寝(ごろね):寝具の準備や着替えをしないで、その場にごろっと横になって寝ること。なお、「うたたね」は「転た寝」と書くのが正確(予測変換などでは「うたたね」と打つと「転寝」と出るが、「転」は「うた(た)」なので送り仮名が必要)。

「囀」:「さえず(る)」という訓読みで問われるケースがほとんど。
※鶯囀(おうてん):ウグイスの声。

④その他例外

「蓴」:スイレン科の多年草である「ジュンサイ」「ぬなわ=ジュンサイの別称」という意味。「ジュンサイ」は音読みの熟語として「蓴菜」とも、訓読みの漢字として「蓴」とも書ける。
・蓴羹鱸膾(じゅんこうろかい):故郷を懐かしく思う気持ち。中国晋の時代の張翰(ちょうかん)が、故郷の料理である蓴羹(ジュンサイのあつもの=吸い物)と鱸膾(スズキのなます=切り身料理)の美味しさに惹かれ、官を辞して故郷に帰ったという故事から。