パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「少」です。
なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。
「少」を含む漢字一覧
漢字 | 音読み | 訓読み | 熟語など | |
---|---|---|---|---|
1 | 少 | ショウ | すく(ない)・すこ(し)・わか(い)・しばら(く)・まれ | 僅少(きんしょう)・幼少(ようしょう)・少頃(しょうけい) |
2 | 抄 | ショウ ソウ | うつ(す)・す(く)・すく(う)・かすめ(る) | 抄本(しょうほん)・抄掠/抄略(しょうりゃく) |
3 | 炒 | ショウ ソウ | い(る)・いた(める) | 炒(い)り豆に花が咲く・煎炒(せんしょう) |
4 | 鈔 | ショウ ソウ | うつ(す)・うつ(し)・かすめ(る)・さつ | 鈔本(しょうほん) |
5 | 省 | セイ ショウ | かえり(みる)・はぶ(く) | 省略(しょうりゃく)・帰省(きせい) |
6 | 秒 | ビョウ | のぎ | 秒速(びょうそく) |
7 | 杪 | ビョウ | こずえ・すえ・ちい(さい) | 杪春(びょうしゅん) |
8 | 眇 | ビョウ ミョウ | すがめ・すが(める)・ちい(さい)・かす(か)・はる(か)・おくぶか(い) | 眇(すが)める・眇目(びょうもく) |
9 | 渺 | ビョウ | はる(か)・かす(か) | 渺茫(びょうぼう)・縹渺(ひょうびょう) |
10 | 緲 | ビョウ | かす(か) | 縹緲(ひょうびょう) |
11 | 妙 | ミョウ ビョウ | たえ・わか(い) | 巧妙(こうみょう)・妙齢(みょうれい) |
12 | 砂 | サ シャ | すな・いさご | 砂金(さきん/しゃきん/すながね)・砂礫(されき/しゃれき)・土砂(どしゃ) |
13 | 紗 | サ シャ | うすぎぬ | 羅紗(らしゃ)・袱紗/帛紗/服紗(ふくさ) |
14 | 沙 | サ シャ | すな・みぎわ・よな(げる) | 沙汀(さてい)・沙汰(さた)・沙羅双樹(さらそうじゅ/しゃらそうじゅ) |
15 | 莎 | サ | はますげ | |
16 | 娑 | サ シャ | 娑婆(しゃば) | |
17 | 裟 | サ | 袈裟(けさ) | |
18 | 鯊 | サ | はぜ | |
19 | 劣 | レツ | おと(る)・いや(しい) | 卑劣(ひれつ)・劣等感(れっとうかん) |
20 | 毟 | むし(る) | ||
21 | 挘 | むし(る) |
「少=ショウ」、「秒=ビョウ」の使い分けはきちんと覚える必要がありそうです。さんずいがつくと「沙=サ」のパターンですね。
①ショウ系
「少」:常用漢字。「すく(ない)」という意味のほか、「わか(い)」、幼いという意味では「少女(しょうじょ/おとめ)」、「しばら(く)」やわずかという意味では「少頃(しょうけい)」など。
※僅少(きんしょう):ごくわずか。すこしばかり。
・少頃(しょうけい):しばらくの間。しばらくして。
・少輔(しょう):律令制で、八省の次官(すけ)。大輔(たいふ)の次の位。「しょうゆう」とも。
・少彦名神/少名毘古那神(すくなびこなのかみ):日本神話の神。体が小さく、敏捷で忍耐力があり、大国主命(おおくにぬしのみこと)と国造りにあたった。医薬などの神とされる。
「抄」:常用漢字。音読みは「ソウ」もあるが漢検漢字辞典での用例がない。写す、抜き書きするという意味では、戸籍謄本の一部の抜粋のことを「戸籍抄本(こせきしょうほん)」というほか、歴史書物の名称として「歎異抄/歎異鈔(たんにしょう)」「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」などでも用いる。その他、紙を「す(く)=漉」という意味では「抄紙(しょうし)」、注釈をつけるという意味では「抄物(しょうもつ)」、奪い取るという意味では「抄掠/抄略(しょうりゃく)」などの使い方もあり。
・抄本(しょうほん):①必要な一部分を抜き書きした本。②もとの書類から一部分を抜き書きしたもの。「鈔本」とも。
・抄掠/抄略(しょうりゃく):かすめとること。奪い取ること。略奪。「鈔掠/鈔略」とも。
「炒」:豆等を「い(る)=煎」、「いた(める)」と読み、「野菜炒(いた)め」「炒飯(チャーハン)」のように中華料理でよく見かける字。漢検漢字辞典では「ショウ」と読む用例が掲げられておらず、熟語(?)は先述の「炒飯」のみ。
・炒(い)り豆に花が咲く:一旦衰えたものが再び活気を取り戻すこと。また、ありえないことのたとえ。
※煎炒(せんしょう):漢字源の解説に登場。いること。
「鈔」:用例としては「鈔本(しょうほん)」や「鈔掠/鈔略(しょうりゃく)」など、「抄」と丸被りする。漢検漢字辞典では訓読みで「さつ」を掲げており、これは紙幣という意味。ただし、「札(さつ)」は音読みである(※漢字源では音読みで「サツ」、訓読みで「さつ」を載せているので諸説あり)。
「省」:常用漢字。「かえり(みる)」、見舞うという意味では「セイ」、「はぶ(く)」、減らすという意味では「ショウ」になる。「省庁」のように、国の行政機関のことを指すこともある。
※帰省(きせい):故郷に帰って、父母の安否を問うこと。故郷に帰ること。(広)
・省沽油(みつばうつぎ):ミツバウツギ科の落葉低木。
②ビョウ系
「秒」:常用漢字。時間の単位としての用例が主だが、訓読みの「のぎ」とはイネ科の植物の穂先のこと。
・秒速(びょうそく):運動するものの速度を、一秒あたりに進む距離で表したもの。一秒間に進む速さ。余談ですが、新海誠監督の映画作品に「秒速5センチメートル」というものがあります。
「杪」:枝先という意味で「こずえ」と読むほか、「すえ(=末)」や終わりという意味もある。
・杪春(びょうしゅん):春の末。暮れの春。陰暦3月頃。
「眇」:「すが(める)」と読み、①片目を細めてみる、②片目をつぶり、あるいは細めて狙いを付けて見ることを指す。「はる(か)」という意味では「渺」を使うケースが多い。
・眇目(びょうもく):①やぶにらみ。すがめ。また、片目が不自由なこと。②目を細くして凝視すること。
「渺」:果てしなく広がるさまという意味では「渺茫(びょうぼう)」、はっきりと見得ないさまという意味では「縹渺(ひょうびょう)」など。
・渺茫(びょうぼう):①水面や平原などが果てしなく広いさま。「―たる砂漠」②遠くかすんでいるさま。
※縹渺/縹緲/縹眇(ひょうびょう):①ほのかにみえるさま。かすかではっきりしないさま。「余韻―」②広く限りのないさま。(広)
「緲」:「かす(か)」と読む。意味は「渺」とほぼ重なる。
※縹渺/縹緲/縹眇(ひょうびょう):①ほのかにみえるさま。かすかではっきりしないさま。「余韻―」②広く限りのないさま。(広)
③ミョウ・ビョウ
「妙」:常用漢字。例外的に「ミョウ」と読むのが一般的で「ビョウ」とも読むが用例なし。「たえ」とは不思議なくらい美しく、優れているという意味。
※巧妙(こうみょう):すぐれてたくみなこと。(広)
・妙諦(みょうてい/みょうたい):すぐれた真理。
・妙齢(みょうれい):うら若い年頃。「―の女性」
④サ・シャ系
「砂」:常用漢字。文字通り「すな」や細かい粒状のものという意味で用いる字。「沙」の書き換えとして用いられるケースもある。
・砂金(さきん/しゃきん/すながね):砂や小石の中に粒状にある自然の金。金鉱脈の風化・浸食によって川床や海岸に流出し、沈積したもの。「沙金」とも。
・砂嘴(さし):潮流・風などの作用で、砂地が湾の一方から海中に細長く堆積して堤状になったもの。駿河湾の三保の松原が有名。
・砂礫(されき/しゃれき):砂と小石。「沙礫」とも。
・砂滑(すなめり):ネズミイルカ科の哺乳動物。
「紗」:「うすぎぬ」と読み、地の薄い絹織物のこと。
※羅紗(らしゃ):折り目の見えないように、起毛などの加工仕上げを施した厚地の毛織物。ビリヤード台などで用いる。
※袱紗/帛紗/服紗(ふくさ):①絹などの小型の風呂敷。進物などの上に掛ける。②茶の湯で、茶器を拭いたり茶碗を受けたりするのに使う絹布。
「沙」:常用漢字。「よな(げる)」とは、細かいものを水に入れてより分け、必要ないものや悪いものを取り除くこと。
・沙子/沙/砂子/砂(いさご):石の極めて細かいもの。すな。まさご。
・沙蚕(ごかい):ゴカイ科の環形動物。釣り餌としてよく用いる。
・沙穀椰子(さごやし):ヤシ科の常緑高木。マレーシアに自生。
・沙汰(さた):①知らせ。消息。「ご無―しております」②さばき。処置。「地獄の―も金次第」③行い。事件。「正気の―とは思えない」。④噂。評判。「世間の―」⑤指図。命令。「追って―する」
・沙中偶語(さちゅうぐうご):臣下が謀反の相談をすること。「偶語」は相談の意味。
・沙羅双樹(さらそうじゅ/しゃらそうじゅ):釈迦が入滅のとき、病床の四方に2本ずつあったという沙羅の木。釈迦の入滅と共に、白く枯れたという。
・沙翁(シェークスピア):イギリスの代表的な劇作家。16世紀後半から17世紀初めにかけて活躍し、ハムレット、オセロ、リア王、マクベスの四大悲劇のほか、ロミオとジュリエット、ベニスの商人などの傑作を残した。
・沙魚/鯊(はぜ):ハゼ科の魚の総称。
「莎」:「はますげ」というカヤツリグサ科の多年草のこと。漢検漢字辞典では「サ」という音読みの用例は掲載されていない。「莎草」と書くと幾つか読みのパターンがある模様。
・莎草(かやつりぐさ):カヤツリグサ科の一年草。
・莎草(ささめ):チガヤのようなしなやかな草。編んで蓑やむしろを作った。
「娑」:「娑婆(しゃば)」という用例がほぼ唯一。字義としては舞う様子のことを指す。
・娑婆(しゃば):①この世。人間界。現世。②獄中や兵営などの拘束された世界から見た、外の自由な世界。
「裟」:漢検漢字辞典では「袈裟(けさ)」に用いられる字とのみ紹介されている字。正真正銘これ以外の用例がない。
※袈裟(けさ):僧侶が左肩から右脇にかけて、衣の上にまとう長方形の布。いくつかの布をつなぎ合わせて作る。
「鯊」:「はぜ」というハゼ科の魚の総称。「沙魚」と2字に分けても同じく「はぜ」と読む。「サ」という音読みの用例はない。
⑤その他例外
「劣」:常用漢字。「少」を含む漢字としては他のパターンによらず「レツ」と読む。力や技量が及ばない、弱いという意味で「劣勢」、「いや(しい)=卑」という意味で「劣悪」「卑劣」など。
・劣等感(れっとうかん):自分が他の人より劣っていると思い込む意識。コンプレックス。
「毟/挘」:いずれも漢検漢字辞典では「国字」とされ、音読みはなく訓読みは「むし(る)」。前者は毛を少なくすることを、後者は手で力づくで少なくすることを表す字。