【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「戊」「戌」「戍」「戉」「戎」

漢検

今回はやや番外編ですが、「戊」「戌」「戍」「戉」と、おまけに「戎」の5字を取り上げます。

これらは形も非常に似通っており、非常に覚えづらい字です。基本的には最初の4字はまとめて四字熟語のようにに覚えるのが良いと思っていますが、覚え方も含めてまとめてみましたので、ご参照ください。

なお、例によって漢検漢字辞典(第2版)を参照しています。辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1
ボウ
つちのえ戊辰戦争(ぼしんせんそう)
2ジュツいぬ戊戌(ぼじゅつ)の政変・戌亥(いぬい)
3ジュまも(る)・たむろ戍卒(じゅそつ)
4エツまさかり
5ジュウつわもの・いくさ・えびす・おお(きい)戎馬(じゅうば)を殺して狐狸(こり)を求む

①戊

「戊」:訓読みは「つちのえ」で、十干(じっかん)の5番目です。
十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸のことです。それぞれ五行に当てはめ、木(き)・火(ひ)・土(つち)・金(か)・水(みず)となり、さらに陰陽の割り当て、「陽」を兄、「陰」を弟というようになりました。
まとめると以下のとおり。

コウオツヘイテイコウシンジン
きのえきのとひのえひのとつちのえつちのとかのえかのとみずのえみずのと

「戊辰戦争(ぼしんせんそう)」のように、特に歴史用語では十干+干支のパターンは多く存在しますが、特に十干の読みは混同しやすいので、「コウ・オツ・ヘイ・テイ・ボ・キ・コウ・シン・ジン・キ」と、一揃いのものとして覚えておくのが便利かも知れません。
その上で、五行の「キ・ヒ・ツチ・カ・ミズ」と対応すると覚えておけば、「戊」であれば「コウ・オツ・ヘイ・テイ・ボ」なので5番目、5番目は「キ・ヒ・ツチ・カ・ミズ」の「ツチ」の奇数番目なので「兄」、よって「戊」は「つちのえ」と、法則性を見出して思い出すこともできます。

②戌

「戌」:訓読みは「いぬ」。動物そのものというよりは、十二支の11番目のことを指すことが多いです。「戌亥(いぬい)」というと北西の方角を指します。「乾(いぬい)」とも書きますね。
「戊」と使われる場面が似ていることもあり、この両者は間違いやすいかも知れません。実際、1898年に清国で発生したクーデター事件に「戊戌(ぼじゅつ)の政変」というものがあり、まさに同時に使われている例があります。
ただ、音読みの用例は余りなく、「戊戌(ぼじゅつ)」も「つちのえいぬ」という訓読みができるか、という観点の方が重要かも知れません。

③戍

「戍」:訓読みは「まも(る)」や「たむろ」。武器を持って国境を守る、またその兵のことを意味します。「たむろ(=屯)」という意味もあり、守備兵の陣営という意味を持ちます。
・戍卒(じゅそつ):国境を警固する兵士。城砦を守備する兵卒。

④戉

「戉」:訓読みは「まさかり」。金太郎が担いでいるアレですが、大きな刃のついた斧のことです。より一般的には「鉞」と書くべきでしょうか。
左側に払わず、右に撥ねるとこの字になりますが、漢検漢字辞典では特に熟語の用例がなく、「エツ」と読む場面が現れません。
漢字源の解説中では「斧戉(ふえつ)」という熟語があり、これは「斧鉞」と同義ですが、「斧鉞」の意味は①おのとまさかり。②転じて、重い刑罰。③征伐の3通りあります。
他の字に比べると、「戉」を含む常用漢字の「越」という字が「エツ」と読むので、「戉」=「エツ」はイメージしやすいですね。

⑤戎(番外)

「戎」:①~④はややこしい漢字としてよく紹介される一方、この字は並べられる機会がないかも知れません。形は似ていますが、「戈」のパーツが独立しているので区別しやすいのかも知れませんね。
訓読みの「えびす」とは、もとは古代中国の西方異民族のことを指し、漢検漢字辞典でもその意味しか掲載していませんが、広辞苑などでは「えびす様(恵比須様)」を表す字として用いることもあるとされています。
「つわもの」や「いくさ」とあるように、武器や兵器を表す字でもあります。
・戎夷(じゅうい):野蛮な国の人民。
・戎器(じゅうき):戦争で用いる道具。武器や兵器。
・戎馬(じゅうば)を殺して狐狸(こり)を求む:小さな利益を上げるために、かえって大きな損失を被るたとえ。人間は時に物事の本質を見極められず、大事なものを失うことへの戒め。「戎馬」とは戦いに使う馬。貴重な兵馬を殺して、値打のないキツネやタヌキを追い求めるの意から。

覚え方

冒頭で申し上げたとおり、「戊」「戌」「戍」「戉」を「ボ・ジュツ・ジュ・エツ」という四字熟語だと思って覚えるのが一番手っ取り早いと思います。
ただ、「ボジュツジュエツ」という呪文は思い出せても漢字の並びを忘れてしまった、となっては意味がないので、この場合に備えて「戊戌」=「ぼじゅつ」だけは確実に暗記するのが良いでしょう。
これは十干十二支の一つにもあるので、この2字が確定すれば、「戉」は「越」の連想で「エツ」と導けるので、残りは「戍」=「ジュ」だな、というように消去法でも思い出せる可能性が高まります。
また、「戊」は十干の「つちのえ」という訓読みが重要です。①で紹介しているとおり、十干の並びで暗記しておけば、記憶が多角化するので定着しやすいのではないでしょうか。