【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「干」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「干」です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「干」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1カンほ(す)・ひ(る)・おか(す)・かか(わる)・もと(める)・たて干渉(かんしょう)・干天の慈雨(かんてんのじう)
2カンけず(る)・きざ(む)週刊誌(しゅうかんし)
3カンおか(す)・よこしま奸佞邪智(かんねいじゃち)・斬奸状(ざんかんじょう)
4カンふせ(ぐ)・おお(う)・ひ(く)扞格(かんかく)・扞禦(かんぎょ)
5カンあせ発汗(はっかん)・汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)
6カンく(れる)・おそ(い)宵衣旰食(しょういかんしょく)
7カンてこ・たて槓杆(こうかん)・欄杆(らんかん)
8カンとりあみ・まれ(に)・はた罕(まれ)に・罕儔(かんちゅう)・旌罕(せいかん)
9カンきも肝胆(かんたん)相照らす・肝腎(かんじん)
10竿カンさお・ふだ百尺竿頭(ひゃくせきかんとう)
11カンはぎ・すね・あばら
12カンいびき鼾声(かんせい)
13カンひでり・かわ(く)旱魃(かんばつ)
14カンあら(い)・あらあら(しい)・たけ(し)精悍(せいかん)
15カンふせ(ぐ)・まも(る)捍格(かんかく)・捍禦(かんぎょ)
16カンわら麦稈(ばっかん)
17カンあらうま駻馬(かんば)
18ガンきし・かどだ(つ)岸壁(がんぺき)・彼岸(ひがん)
19ケンのき・くるま・てすり・と(ぶ)・たか(い)軒昂(けんこう)・軒輊(けんち)
20ケツあば(く)詆訐(ていけつ)

①カン系

」:常用漢字。「ほ(す)」「ひ(る)」という意味では「干拓」「干瓢(かんぴょう)」、「おか(す)」「かか(わる)」という意味では「干渉」「干犯(かんぱん)」、「もと(める)」という意味では「干禄(かんろく)」、「たて(=盾)」や防ぐという意味では「干戈(かんか)」。その他、少しばかりという意味では「若干」、手すりという意味で「欄干(らんかん)」など。また、えとのじっかん(十干)としても使用する。
・干支(えと):十干十二支を組み合わせたもの。甲子(きのえね)、乙丑(きのとうし)、丙寅(ひのえとら)など60種類の組み合わせがある。年月・時刻・方角などに用いる。
・干戈(かんか):①たてとほこ。また、武器。②戦争。「―を交える」
・干将莫邪(かんしょうばくや):名剣の名。「干将」とは中国春秋時代、呉の刀鍛冶の名。「莫邪」とはその妻の名。
・干天の慈雨(かんてんのじう):日照り続きのときに雨が降るように、困り果てたときに救われるたとえ。また、待望していたことが実現するたとえ。
・干魃/旱魃(かんばつ):長い間、雨が降らないこと。水枯れ。日照り。
・干犯(かんぱん):干渉して、他の権利を侵すこと。「統帥権―問題(=1930年(昭和5)ロンドン海軍軍縮条約の政府回訓決定の是非をめぐっておこった憲法論争のこと)」
・干瓢/乾瓢(かんぴょう):ユウガオの果肉を紐のように薄く剝いて乾燥させた食品。水でもどして使う。
・干禄(かんろく):①禄(武士の給与)を求めること。仕官を望むこと。②天からの福を求めること。天の恵みを願うこと。
・干涸びる/干枯びる(ひからびる):①すっかり水分がなくなる。②うるおいや生気が失われる。
・干鱈(ひだら):タラを薄塩にしてほしたもの。干し鱈。
・干飯/乾飯/糒(ほしいい):貯蔵・携行用として、蒸した米をほしたもの。水に浸せばすぐに多気られた。

」:常用漢字。「週刊誌」のように本を出版するという意味が主。訓読みは「けず(る)」「きざ(む)」。
・刊行(かんこう):書物などを印刷して、広く世に出すこと。出版。発行。

「奸」:淫らな異性関係を持つ、あるいは「よこしま」、悪賢い、悪人などの意味をもつ。「姦」に近い意味。
・奸佞邪智(かんねいじゃち):心がねじけて、ずるがしこく立ち回ること。また、その人。
※斬奸状(ざんかんじょう):悪人を斬るにあたって、その趣意を記した文書。

「扞」:「ふせ(ぐ)」という意味で使われやすい。「おお(う)(=覆)」という意味では「蔽扞(へいかん)」など。
・扞格(かんかく):互いに相手を拒み、受け入れないこと。「―を来す」
・扞禦(かんぎょ):防ぎ守ること

」:常用漢字。文字通り「あせ」や汗をかくという意味。
・汗疹/汗肬(あせも):汗をかいたままにしたことで、皮膚にできる赤い小さな湿疹(しっしん)。
・汗衫(かざみ):①昔、汗取り用に来た麻の単衣の短い衣。②平安時代以降、貴族の童女などが夏に着た正装用の上着。
・汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう):蔵書が非常に多いことのたとえ。牛車に積んで運ぶとウシが汗だくとなり家に積むと棟木まで届いてしまうほど本が多いという意から。
・汗馬(かんば)の労(ろう):物事を成功させるために奔走する苦労。また、物を遠くに運ぶ労苦。もとは、ウマを駆けて戦場で奔走する労苦の意。

「旰」:「旱」と字構成が変わっただけであるが、「棋/棊」の関係とは異なりこちらは別字。意味は「く(れる)」「おそ(い)」とある通り、日が暮れる夕方頃という意味を持つ。漢検漢字辞典では見出し語の紹介がない。
※旰昃(かんしょく):漢字源に掲載。①日暮れ。②日暮れまで政務に励むこと。
※宵衣旰食(しょういかんしょく):天子が政治に勤勉なこと。夜の明けきらないうちから礼服を着て、日が暮れてから食事をとるということから。

「杆」:「てこ(=梃子)」や「たて(=盾)」、手すりという意味。
※槓杆(こうかん/てこ):一点を支点として自由に回転でき、小さな力を大きな力に変える棒。また、その仕掛け。
・杆菌(かんきん):棒状や円筒形の細菌の総称。結核菌、赤痢菌、大腸菌など。バチルス。

「罕」:「まれ(に)」という訓読みで問われることの方が多い。「とりあみ」とは、鳥を捕まえるための網のこと。「はた(=旗)」という意味もあり、「旌罕(せいかん)」のように用いる場合がある。
・罕儔(かんちゅう):漢字源に掲載。同類が少ない。比類まれである。

」:常用漢字。五臓六腑の一つ「肝臓」の意味。大事なものであることから、「肝腎(かんじん)」「肝要(かんよう)」「肝銘(かんめい)」のようにも使う。
・肝腎/肝心(かんじん):極めて大切なさま。
・肝胆(かんたん)相(あい)照らす:互いに心から理解し合って深く付き合うこと。心の底を互いにてらし合う意。「彼と僕とは―仲だ」

「竿」:ベストセラー新書「竿竹屋はなぜ潰れないのか」でも馴染みの「さお」と読む字。あまり知られていない読み方としては「ふだ」というものがあり、「竿牘(かんとく)」という熟語の場合はこの意味。
・竿灯(かんとう):秋田市の七夕祭。長い丸竹に横竹を張り、そこに提灯を九段に吊り下げたもの。各町内で、太鼓の音に合わせて掛け声をかけながら練り歩き競う。
・百尺竿頭(ひゃくせきかんとう):100尺もある長い竿の先。到達できる極点。また、向上し得る最高点のこと。100尺はおよそ30m。

「骭」:①はぎ、すね(=脛)、②あばら(=肋)。見出し熟語や用例はない。

「鼾」:「いびき」と読むのが特徴。
・鼾声(かんせい):いびきの音。「布団に入るや否や―百雷のごとし」

「旱」:訓読みは「ひでり」と読み、熟語も同様の意味合いで使われることが多い。ただ、熟語としては「干」にほぼ書き換えが可能。

「悍」:「おぞ(ましい)」と読む字だが、なぜか漢検漢字辞典では訓読みとして掲載されていない。それ以外の意味だと気性が荒い、猛々しいという意味合い。
※精悍(せいかん):気性が鋭く勇敢なこと。体つきや動作が鋭く、たくましく見えるさま。(広)
・悍馬/駻馬(かんば):気性が荒く扱いにくいウマ。暴れ馬。

「捍」:「扞」とは訓読みに差異があるが、「ふせ(ぐ)」「まも(る)」という意味合いでは「扞」とほぼ同一。漢検漢字辞典での見出し熟語も「捍格」「捍禦」だが、いずれも「扞」への書き換えが可能。

「稈」:「わら」と読む。見出し熟語はなし。
※麦稈(ばっかん/むぎわら):刈り取った麦の茎。また、それを乾燥したもの。むぎわら。

「駻」:「あらうま」と読み、そのまま暴れ馬という意味を持つ。
・駻馬/悍馬(かんば):気性の激しい馬。暴れ馬。
・鞿(き)をもって駻突(かんとつ)を御す:ゆるいおもがいで、荒馬をうまくさばく。軽い刑罰で悪人を柔げることをいう。「鞿」は漢検対象外漢字。

②その他例外

」:常用漢字。2023年現在の日本の総理大臣である岸田文雄の苗字でも使います。音読みは「ガン」で、「干」系列の中では例外的。文字通り「きし」という意味では「護岸」「岸辺」、表外読みの「かどだ(つ)」という意味では「岸傑」など。

」:常用漢字。「のき」と読むのが一般的で、音読みは「ケン」。熟語としては、上がる、高い、高く上がるという意味合いの熟語が多いイメージ。
・軒昂(けんこう):気力が大いに高まっている様子。奮い立っているさま。
・軒輊(けんち):上がり下がり。軽重。高低。優劣。「ものの―を論ずる」
・軒端(のきば):のきの端。また、軒の辺り。

「訐」:音読みは「ケツ」で、この字が例外的。人の秘密などを明らかにするという意味で「あば(く)」と読む。
※詆訐(ていけつ):漢字源に掲載。①欠点をあばいて、とことんまでつきつめる。②そしる。人のことをバカにする。