【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「曷」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「曷」です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「曷」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1カツなに・なん(ぞ)・いずく(んぞ)・いつ曷為(なんすれぞ)・曷若(いかん)
2カツしか(る)・おど(す)恫喝(どうかつ)・喝采(かっさい)・喝食(かっしき)
3カツかわ(く)・むさぼ(る)渇愛(かつあい)・渇望(かつぼう)
4カツくず・かたびら・かずら・つづら葛藤(かっとう)・裘葛(きゅうかつ)
5カツぬのこ褐寛博(かつかんぱく)・褐色(かっしょく)
6カツえびす羯鼓(かっこ)・羯磨(かつま)
7カツさそり・きくいむし・しくもむし蛇蝎(だかつ)
8カツ
ケツ
さそり蛇蠍(だかつ)
9カツかわぐつ靺鞨(まっかつ)
10カツ
カイ
ケイ
むさぼ(る)・おど(す)・いこ(う)恫愒(どうかつ)玩愒(がんかい)
11ケツ
ケイ
はや(い)・いこ(う)偈偈(けつけつ)偈頌(げじゅ・げしょう)・讃偈(さんげ)
12ケツいしぶみ墓碣(ぼけつ)・碑碣(ひけつ)
13ケツつ(きる)・つ(くす)・か(れる)・ことごと(く)竭尽(けつじん)・枯竭(こけつ)
14ケツ
カツ
や(める)・や(む)・つ(きる)・やす(む)・か(れる)歇後(けつご)歇驕(かっきょう)
15ケイかか(げる)掲載(けいさい)
16アツとど(める)・と(める)・た(つ)・さえぎ(る)防遏(ぼうあつ)・遏雲(あつうん)の曲・遏絶(あつぜつ)
17ロウく(れ)上﨟(じょうろう)
18エツまみ(える)謁見(えっけん)
19アイおだ(やか)・おお(い)・さか(ん)藹藹(あいあい)・藹然(あいぜん)
20アイもや靄靄(あいあい)・靄然(あいぜん)

※「曷」を含む漢字は種類が多く、読み方にもいくつか種類があります。パターン分けをして覚えるのが良いかと思います。

①カツ系

「曷」:基本的には漢文で使用する文字で、音読みでの用例なし。曷為(なんすれぞ)・曷若(いかん)のように、反語や疑問での使用が主。

」:常用漢字。恫喝(どうかつ)、恐喝(きょうかつ)など。
・喝食(かっしき):「喝食行者(かっしきあんじゃ)」の略で、大衆に声で食事を知らせる役僧のこと、あるいは「喝食姿」の略で、もとどりを結んで垂らす童子の髪型のこと。
・喝火(かっこ):禅寺で就寝前に火の用心を呼びかけること、またその僧のこと。

」:常用漢字。渇水(かっすい)、渇望(かつぼう)など。
・渇愛(かつあい):ひどく好むこと。また、激しい愛着を持つこと。

」:常用漢字。葛藤(かっとう)、葛根湯(かっこんとう)が主な用例。葛藤は訓読みでは「つづらふじ」という植物名になる。葛餅(くずもち)、葛湯(くずゆ)のように「くず」と読む場合、葛折(つづらおり)、葛箙(つづらえびら)のように「つづら」と読む場合など、訓読みでの使い分けの方が重要かも知れません。

」:常用漢字。褐色(かっしょく)など。褐色(カチいろ)と読む場合、黒く見えるほど濃い藍色を指す。「カチ」は見出し語の読みにはないが「呉音」として掲載あり。
・褐寛博(かつかんぱく):粗末なだぶだぶの衣服。身分の低い卑しい人。無頼漢。

「羯」:用例としては以下の2例。
・羯鼓(かっこ):雅楽に使う両面太鼓。または能・狂言・歌舞伎で使う小太鼓のこと。
・羯磨(かつま):仏教用語で作業、働きのこと。また修行者の受戒や懺悔のこと。

「蝎」「蠍」:蛇蝎/蛇蠍(だかつ)がほぼ唯一の用例。それぞれ異字体ではなく別字。
「蠍」には「ケツ」という音読みがあるものの用例なし。
なお、訓読みではいずれも「さそり」と読みますが、「蝎」は「きくいむし」「すくもむし」とも読み、「蝎虎」(かっこ):ヤモリという用例の記載あり。

「鞨」:訓読みは「かわぐつ」。音読みの見出し用例なし。
※靺鞨(まっかつ):中国東北部のツングース系民族のこと。世界史の用語としては比較的有名か。

②カイ系

「愒」:「カイ」「カツ」「ケイ」の3通り。「むさぼる」という意味では「カイ」、「おどす」という意味では「カツ」、「いこう」という意味では「ケイ」という使い分け。ただし「ケイ」の用例はなし。
・恫愒(どうかつ)=恫喝
・玩愒(がんかい):むさぼる。無駄に過ごす。
※翫歳愒日(がんさいかいじつ):何もしないで怠惰に過ごし、月日を無駄にすること。

③ケツ系

「偈」:「ケツ」「ケイ」「ゲ」の3通り。用例としては「ゲ」の方が多い。
・偈頌(げじゅ・げしょう):韻文体の経文。また、仏教の教えを詩の形式で表したもの。
※讃偈(さんげ):経文で詩句の形式をとった部分。
※偈偈(けつけつ):つよい。はやい。すこやか。

「碣」:訓読みのとおり「いしぶみ」の意味。音読みの見出し用例なし。
※墓碣(ぼけつ):墓のしるしに建てる石。墓石。
※碑碣(ひけつ):石碑。碑文。

「竭」:意味合いとしては「尽」に近い。
・竭尽(けつじん):使いつくすこと。つきてなくなること。
※甘井先竭(かんせいせんけつ):才能のある者ほど憂き目にあったり、早く衰退するということ。

「歇」:間歇泉(かんけつせん)が有名な用例。「ケツ」と「カツ」の2通りがある。
・歇後(けつご):成語の下の語を省略し、前半だけで全体の意を表す方法。「友于兄弟:兄弟慈しみ合い仲良くする」を「友于」のみで「兄弟仲良く」の意とするなど。
※歇驕(かつきょう/かっきょう):口の長い猟犬。なお、漢検辞典では「かっきょう」を読みとしているものの、他の辞典では「けつきょう」と読むとするものもあり。

④その他例外

(1)ケイ

」:常用漢字。掲載(けいさい)、掲揚(けいよう)など。
同じパーツを含む漢字で「ケイ」と読む漢字は「愒」「偈」がありますが、いずれも用例がなく、事実上は唯一の読み方。

(2)アツ

「遏」:音読みは「アツ」のみ。
・防遏(ぼうあつ):防ぎ止めること。
・遏雲(あつうん)の曲:空を流れる雲を止めるほどの素晴らしい音楽、また歌声。
・遏絶(あつぜつ):①おしとどめて物事をさせないこと。②断ち切ること。一族を絶滅させること。

(3)ロウ

「﨟」:音読みは「ロウ」のみ。「臘」に近い意味。見出し語はなし。
※上﨟(じょうろう:僧侶が得度(とくど)してからの年数。

(4)エツ

」:常用漢字。謁見(えっけん)など。身分の高い人に会うという意味。

(5)アイ

「藹」「靄」:音読みの用例はほとんど同じ。
・藹藹/靄靄(あいあい):①なごやかなさま。「和気ー」。②草木が茂るさま。盛んなさま。
・藹然(あいぜん):①勢いよく盛んな様子。②気持ちが穏やかなさま。③雲が集まるさま。
・靄然(あいぜん):①もや、霧などがたなびくさま。②気持ちや表情がなごやかなさま。
藹然/靄然は、気持ちが穏やかな様子という意味は両方ともある一方、盛んと意味は「藹」にしかないので、勢いが盛んな様子は「藹然」のみ。
また、辞書上は「雲が集まるさま」も「藹然」のみとしているため、語選択の書き取り問題で出題された場合は要注意かも知れません。