漢検一級配当漢字の中で出題頻度が低そうな字(異字体編)

漢検

漢検一級の配当漢字は約6000字あるが、その全てが万遍なく出題されているという訳ではなく、繰り返し出題される頻出の字もあれば、滅多に(あるいは一度も)出題されないような字も散見されるのは事実かと思われる。
前回「漢検一級配当漢字の中で出題頻度が低そうな字」にてピックアップした字とは別の視点で、漢検一級配当漢字でありながら、漢検の出題形式から見て出題可能性が著しく乏しい漢字を列挙することにする。

選定基準

今回は「配当内漢字の異字体」である。
漢検の配当漢字については正字のほか、許容字体が認められてるケースは多くあるものの、その多くは飽くまで「許容字体」に過ぎない。
漢検漢字辞典では赤四角囲いで配当級が記されているが、許容字体の多くは〔かぎカッコ〕書きされているのみで配当級がない。旧字体については〘二重かぎカッコ〙で「1/準1」と配当級が記されているが、これは漢検協会が公表する「各級の概要(出題内容・審査基準・合格基準・採点基準)」のうち、1級で「複数の漢字表記について理解していること(鹽―塩、颱風―台風など)」、準1級で「複数の漢字表記について理解していること(國―国、交叉―交差など)」とあるように、各級で旧字体の理解が求められていることによるものだろう。
このような傾向がある中、旧字体ではない異字体の中に、1級配当として個別に割り当てられているものがあった。これらについて今回はまとめていこうと思う。

漢検漢字辞典の例。左は異字体が〔〕(かぎカッコ)で記され配当級がない例。中は旧字体が〘二重かぎカッコ〙で記され「1/準1」配当と記された例。右は旧字体ではない異字体が〔〕(かぎカッコ)で記されているが「1」配当とされている例。

1級配当とされる異字体の例

1級配当とされる異字体は以下の20字が該当するものと思われる。遺漏があれば適宜追記する。

項番漢字正字音読み訓読み備考
1キャクしりぞ(く)/しりぞ(ける)/かえ(って)却の異字体
2コクくに國(国の旧字体)の異字体
3コウおか岡の異字体
4キ/ゴ棋の異字体
5チョウす(む)/す(ます)澄の異字体
6エンけむ(る)/けむり/けむ(い)/けぶ(る)/けむ[火+垔](煙の旧字体)のの異字体
7瑠の異字体
8チン/ガンきぬた砧の異字体。ただし漢検漢字辞典上の扱いが曖昧。
9ジュン/シュンたけのこ/たけのかわ筍の異字体
10婿セイむこ壻(婿の旧字体)の異字体
11うた/うた(う)歌の異字体
12ソンむら村の異字体。ただし漢検漢字辞典ではそれぞれ別字扱い。
13カンかんが(みる)/かがみ鑑の異字体
14カン/フかま/ほとぎ罐(缶の旧字体)の異字体
15ザツ/ゾウま(じる)/ま(ぜる)雜(雑の旧字体)の異字体
16はたがしら覇の異字体
17インひびき/おもむき韻の異字体
18ホン/ハンひるがえ(る)/ひるがえ(す)[番+羽](翻の旧字体)の異字体
19トウたたか(う)鬪(闘の旧字体)の異字体
20ネン/デンねば(る)粘の異字体

おわりに

以上が1級配当とされる異字体の一覧である。
出題可能性が低いとはしたものの、例えば「邨」については読み問題として出題された例はあるため、これらを学習対象から除外しようとするのは早計かもしれない。
ただ、「邨」については漢検漢字辞典上は異字体としては扱っていないため、漢検漢字辞典自身が異字体として取り扱っている漢字の出題があり得るかは定かではない。
その意味では、「邨」のほか、「碪」の扱いは特に微妙である。漢検漢字辞典上、「碪」の意味欄で「『砧』の異字体」とされている一方、「砧」には類義語として「碪」が紹介されているのみである。また、「碪」には音読み「ガン」があるとする一方、「砧」にはない(ただし「「碪」を「ガンと読む用例は掲載なし」)など、扱いが一貫していない。
確かに「砧」と「碪」は明確に異字体とはしていない辞書もあり、漢検漢字辞典の曖昧な取り扱いも分からないではないが、だとすると「碪」の意味欄で「『砧』の異字体」と書くのはややミスリードな感もある。漢検の意向はどうなのだろうか。

参考資料

1.漢検 漢字辞典

2.漢字辞典オンライン