常用漢字2136字の中には、常用漢字表内で「訓読み」しか定められていない一方、表外読みで「音読み」が存在しているものがある。
漢検1級などではこのような表外読みも当然のように出題されるが、常用漢字の「音読み」の表外読みは敢えて勉強する機会が乏しく、不意に出題され読みが分からないという場面に出会しやすい印象もある。
今回はそのような漢字を集め、一覧化をしてみた。
訓読みしかない常用漢字の一覧
漢検漢字辞典に掲載された常用漢字のうち、常用漢字表内読みで訓読みしか定められていない漢字は73字存在した。遺漏があれば適宜追記する。
音読みの用例は原則は漢検漢字辞典に従い、これに掲載がなければ大辞泉、精選版日本国語大辞典、字通などの他の辞典・字典を参照した。
| 項番 | 漢字 | 訓読み | 音読み | 熟語の例 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 扱 | あつか(う) | ソウ | 「扱排(きゅうはい)」とは、収めとること。(字通) |
| 2 | 宛 | あて(る) | エン | 「宛然(えんぜん)」とは、そっくりそのままであるさま。「宛転(えんてん)」とは、緩やかな曲線を描くさま。話などがよどみなく進むさま。(漢検漢字辞典) |
| 3 | 嵐 | あらし | ラン | 「嵐影湖光(らんえいここう)」とは、もやに包まれた山の姿と光る湖面の景色。山と湖の調和した美しい風景の形容。(漢検漢字辞典) |
| 4 | 芋 | いも | ウ | 見出し語に「芋粥(うしゅく)」。(漢検漢字辞典) |
| 5 | 唄 | うた | バイ | 「梵唄(ぼんばい)」とは、声明(しょうみょう)の別称、また声明のうち梵語を漢字音訳した歌詞による唄。(漢検漢字辞典) |
| 6 | 畝 | うね | ホ | 「田畝(でんぽ)」とは、田畑。「畎畝(けんぽ)」とは、田のあぜと畑のうね。 田園。いなか。(大辞泉) |
| 7 | 浦 | うら | ホ | 「曲浦(きょくほ)」とは、曲がりくねった形の海岸。(大辞泉) |
| 8 | 虞 | おそれ | グ | 「虞犯(ぐはん)」とは、罪を犯すおそれがあること。「虞美人草(ぐびじんそう)」とは、ヒナゲシの別称。(漢検漢字辞典) |
| 9 | 俺 | おれ(/われ) | エン | ※用例見当たらず |
| 10 | 卸 | おろ(す)/おろ(し) | シャ | 「卸任(しゃにん)」とは、任務を辞めること。(漢検漢字辞典) |
| 11 | 蚊 | か | ブン | 「蚊虻(ぶんぼう)」とは、カとアブ。小さいもの・つまらないもののたとえ。(漢検漢字辞典) |
| 12 | 貝 | かい | バイ | 「貝貨(ばいか)」とは、貝殻で作った昔の貨幣。(漢検漢字辞典) |
| 13 | 垣 | かき | エン | 「垣籬(えんり)」とは、竹や柴などで目を粗く編んで作った垣。(漢検漢字辞典) |
| 14 | 柿 | かき | シ | 見出し語に「熟柿(じゅくし)」。(漢検漢字辞典) |
| 15 | 掛 | か(ける) | (カイ/ケ/カ) | 「掛錫(かしゃく)」とは、行脚の禅僧が、僧堂に滞在し修行すること。転じて、僧堂に籍をおいて修行すること。(大辞泉) |
| 16 | 潟 | かた | セキ | 「潟湖(せきこ)」とは、砂嘴(さし)、砂州、沿岸州などによって海の一部が外海と隔てられてできた湖沼。(精選版日本国語大辞典) |
| 17 | 且 | か-つ | ショ | 見出し語に「苟且(こうしょ)」「姑且(こしょ)」。(漢検漢字辞典) |
| 18 | 株 | かぶ | シュ | 見出し語に「根株(こんしゅ)」「守株(しゅしゅ)」。(漢検漢字辞典) |
| 19 | 釜 | かま | フ | 「釜竈(ふそう)」とは、かまとかまど。転じて、炊事道具。(漢検漢字辞典) |
| 20 | 鎌 | かま | レン | 「鎌利(れんり)」とは、かまのように鋭いこと。(漢検漢字辞典) |
| 21 | 刈 | か(る) | ガイ/カイ | 見出し語に「芟刈(さんがい)」。(漢検漢字辞典) |
| 22 | 串 | くし | セン/カン | 「串戯(かんぎ)」とは、戯れ。「串通(かんつう)」とは、結託すること。(字通) |
| 23 | 熊 | くま | ユウ | 「熊掌(ゆうしょう)」とは、クマの掌の肉。(漢検漢字辞典) |
| 24 | 繰 | く(る) | ソウ | 「繰糸(そうし)」とは、繭から生糸をたぐりとる作業。(漢検漢字辞典) |
| 25 | 桁 | けた | コウ | 見出し語に「衣桁(いこう)」。(漢検漢字辞典) |
| 26 | 駒 | こま | ク | 「駒隙(くげき)」とは、年月が早く過ぎること。(漢検漢字辞典) |
| 27 | 込 | こ(む)/こ(める) | ※音読みなし | |
| 28 | 頃 | ころ | ケイ/キョウ | 「頃刻(けいこく)」とは、少しの間。「頃歳(けいさい)」とは、ここ何年か、近年。(漢検漢字辞典) |
| 29 | 崎 | さき | キ | 「崎嶇(きく)」とは、①山道が曲がりくねって険しいさま、②世渡りの困難なさま。(漢検漢字辞典) |
| 30 | 咲 | さ-く | ショウ | 「咲庵(しょうあん)」とは、中山義秀の時代小説。(大辞泉) |
| 31 | 皿 | さら | ベイ | 見出し語に「器皿(きべい)」。(漢検漢字辞典) |
| 32 | 鹿 | しか/か | ロク | 「鹿茸(ろくじょう)」とは、シカの生え始めたばかりのつの。(漢検漢字辞典) |
| 33 | 芝 | しば | シ | 「芝蘭玉樹(しらんぎょくじゅ)」とは、優れた人材。(漢検漢字辞典) |
| 34 | 尻 | しり | コウ | 見出し語に「尻坐(こうざ)」。(漢検漢字辞典) |
| 35 | 据 | す(える) | キョ | 見出し語に「拮据(きっきょ)」。(漢検漢字辞典) |
| 36 | 杉 | すぎ | サン | 見出し語に「老杉(ろうさん)」。(漢検漢字辞典) |
| 37 | 裾 | すそ | キョ | 見出し語に「衣裾(いきょ)」。(漢検漢字辞典) |
| 38 | 瀬 | せ | ライ | 見出し語に「迅瀬(じんらい)」、「石瀬(せきらい)」。(漢検漢字辞典) |
| 39 | 滝 | たき | ロウ | 「濤滝(とうろう)」とは、波しぶきの立つ波。「滝船(ろうせん)」とは、早瀬船。(字通) |
| 40 | 但 | ただ(し)/ただ | タン/ダン | 見出し語に「但州(たんしゅう:但馬国の略称)」。(漢検漢字辞典)、「但可(たんか)」とは、すべからく。(字通) |
| 41 | 棚 | たな | ホウ | 「涼棚(りょうほう)」とは、暑さを避け涼むために腰を下ろす台。(大辞泉) |
| 42 | 誰 | だれ | スイ | 「誰何(すいか)」とは、「だれか」と声をかけて、名前や身分を問いただすこと。(漢検漢字辞典) |
| 43 | 塚 | つか | チョウ | 「陪塚(ばいちょう)」とは、大形古墳に近接して存在する小古墳で、その性格が大形墳に従属するもの。(精選版本国語大辞典) |
| 44 | 漬 | つ(ける)/つ(かる) | シ | 「浸漬(しんし)」とは、液体につけひたすこと。転じて、教義・思想などが次第に浸透していくこと。(精選版日本国語大辞典) |
| 45 | 坪 | つぼ | ヘイ | ※用例見当たらず(「坪壩(へいは)」とは、広場。(字通)、ただし「壩」は漢検配当外) |
| 46 | 爪 | つめ/つま | ソウ | 「爪牙(そうが)」とは、①つめときば。転じて、相手を攻撃する武器・手段。②君主の手先となって働く家臣。(漢検漢字辞典) |
| 47 | 鶴 | つる | カク | 「鶴首(かくしゅ)」とは、つるのように首を長くして、物事の到来を待ちわびること。(漢検漢字辞典) |
| 48 | 峠 | とうげ | ※音読みなし | |
| 49 | 栃 | とち | ※音読みなし | |
| 50 | 届 | とど(ける)/とど(く) | カイ | 「届候(かいこう)」とは、時期に至る。「届路(かいろ)」とは、出発する。(字通) |
| 51 | 丼 | どん・どんぶり | タン/トン | ※用例見当たらず |
| 52 | 梨 | なし | リ | 「梨園(りえん)」とは演劇界。特に、歌舞伎役者の社会のこと。「梨花(りか)」とは、ナシの花。(漢検漢字辞典) |
| 53 | 謎 | なぞ | メイ | 「謎語(めいご)」とは、なぞが含まれた言葉。(漢検漢字辞典)、「撲朔謎離(ぼくさくめいり)」とは、性別が男か女か見分けがつかないこと。 または、ごちゃごちゃと入り組んでいて区別がつきにくいこと。(四字熟語辞典オンライン) |
| 54 | 鍋 | なべ | カ | 「鍋竈(かそう)」とは、かまど。「鍋戸(かこ)」とは、塩焼き。(字通) |
| 55 | 匂 | にお(う) | ※音読みなし | |
| 56 | 虹 | にじ | コウ | 「虹霓(こうげい)」とは、にじ。「虹彩(こうさい)」とは、眼球の周りにあって、眼の中に入ってくる光の量を調整する円盤状の膜。(漢検漢字辞典) |
| 57 | 箱 | はこ | ショウ/ソウ | 「巾箱(きんそう)」とは、①布で張ってある小箱、②「巾箱本(きんそうぼん)」の略。(精選版日本国語大辞典) |
| 58 | 箸 | はし | チョ | 見出し語に「象箸(ぞうちょ)」。(漢検漢字辞典) |
| 59 | 畑 | はた/はたけ | ※音読みなし | |
| 60 | 肌 | はだ(/はだえ) | キ | 「肌膚(きふ)」とは、はだ。皮膚。(漢検漢字辞典) |
| 61 | 膝 | ひざ | シツ | 「膝下(しっか)」とは、①膝のそば。②養育してくれる人のそば。③父母などへの手紙の脇付に書く語。(漢検漢字辞典) |
| 62 | 肘 | ひじ | チュウ | 「肘腋(ちゅうえき)」とは、①胸の両横で、腕のついている部分。②ひじとわき。「掣肘(せいちゅう)」とは、そばから干渉して自由な活動を妨げること。(漢検漢字辞典) |
| 63 | 姫 | ひめ | キ | 見出し語に「姫姜(ききょう)」、「寵姫(ちょうき)」、「怪姫(ようき)」。(漢検漢字辞典) |
| 64 | 頰 | ほお | キョウ | 見出し語に「緩頰(かんきょう)」、「紅頰(こうきょう)」、「豊頰(ほうきょう)」。(漢検漢字辞典) |
| 65 | 堀 | ほり | クツ/コツ | 「堀虚(くっきょ)」とは、洞穴。「堀強(くっきょう)」とは、崛起する。(字通) |
| 66 | 枕 | まくら | チン | 「枕戈待旦(ちんかたいたん)」とは、戦いの準備を常に怠らないたとえ。(漢検漢字辞典) |
| 67 | 又 | また(/ふたた(び)) | ユウ | 「又隠(ゆういん)」とは、茶室の一つ。京都市の裏千家家元の邸内にある。承応二年宗旦が、利休好みの四畳半を基に開いた。(精選版日本国語大辞典) |
| 68 | 岬 | みさき | コウ | 「岬角(こうかく)」とは、みさき。「岬岫(こうしゅう)」とは、巌穴。(字通) |
| 69 | 娘 | むすめ(/こ) | ジョウ/ニョウ | 「娘子(じょうし)」とは、①むすめ。少女。②女性。母・妻など婦人の通称。(漢検漢字辞典) |
| 70 | 弥 | や(/あまね(し)/ひさ(しい)/わた(る)/つくろ(う)/いよいよ/いや) | ビ/ミ | 「弥久(びきゅう)」とは、久しきに渡ること。「弥縫(びほう)」とは、ほころびを縫いつくろうこと。(漢検漢字辞典) |
| 71 | 闇 | やみ(/くら(い)) | アン | 「闇然(あんぜん)」とは、①悲しくて暗く沈んでいるさま。②暗いさま。(漢検漢字辞典) |
| 72 | 脇 | わき(/かたわ(ら)) | キョウ | 「脇息(きょうそく)」とは、座ったときに肘をおいて体をもたせかける道具。(漢検漢字辞典) |
| 73 | 枠 | わく | ※音読みなし |
※項番15:「掛」:漢検漢字辞典上は音読みなし。一方、後続の熟語の中には「掛錫(カシャク)」があり、意味欄に「『カ』は慣用音」との註釈があるほか、他の辞典では音読みとして「カイ/ケ/カ」を挙げているものが幾つか確認。以上から、音読みは「(カイ/ケ/カ)」の括弧書きとした。
おわりに
以上が訓読みしかない常用漢字の一覧である。
比較的メジャーな音読みもある一方、凡そ訓読みでの用例しかないような漢字については、音読みの想像もしづらいため、まとめて学習するメリットは一定あると思われた。
参考資料
1.漢検 漢字辞典
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