【漢検1級勉強法】パーツ別 読み間違いやすい漢字「享」

漢検

パーツ(音符)ごとに漢字をまとめてみる企画、今回のパーツは「享」です。

なお、漢字の分類、読み、熟語などについては漢検漢字辞典(第2版)を参照していますので、辞典によっては用例等が異なる場合がありますが、ご容赦ください。

「享」を含む漢字一覧

漢字音読み訓読み熟語など
1カク  くるわ城郭(じょうかく)・郭公(かっこう/ほととぎす)
2カクくるわ・むな(しい)・
ひろ(い)・ひろ(げる)
廓清(かくせい)・廓寥(かくりょう)
3カクひつぎ・うわひつぎ棺椁(かんかく)
4カクひつぎ・うわひつぎ棺槨(かんかく)
5トンあつ(い)敦厚(とんこう)・敦朴・敦樸(とんぼく)
6ジュン
トン
あつ(い)・まこと惇朴/惇樸(じゅんぼく/とんぼく)
7ジュンあつ(い)・すなお淳厚(じゅんこう)
8ジュン
シュン
もっぱ(ら)・あつ(い)芳醇(ほうじゅん)・醇化(じゅんか)
9ジュン
シュン
あつ(い)・まこと・ねんご(ろ)・くど(い)諄諄(くどくど/じゅんじゅん)
10ジュンうずら鶉衣(じゅんい)・鶉居(じゅんきょ)
11ジュクたれ・いず(れ)・つまび(らか)孰(いず)れ
12ジュク義塾(ぎじゅく)
13ジュクう(れる)・う(む)・に(る)・に(える)・な(れる)・つらつら・つくづく・こな(す)・こな(れる)熟議(じゅくぎ)・熟熟(つらつら/つくづく)
14キョウう(ける)・あ(たる)享受(きょうじゅ)
15コウ
キョウ
ホウ
とお(る)・に(る)亨通(こうつう)・亨熟(ほうじゅく)
16ホウに(る)割烹(かっぽう)

ややこしいように見えて「郭」がつくと「カク」、「享」がつくと「ジュン」、「孰」だと「ジュク」と大体の区別が可能。例外のパターンをしっかり覚えるようにしましょう。

①カク系

」:常用漢字。訓読みは「くるわ」で、囲いを設けた一定の場所という意味。
・城郭(じょうかく):①城の外側の囲い。②城。
・郭公(かっこう):カッコウ科の鳥。
・郭公(ほととぎす):ホトトギス科の鳥。
・郭公花(ほととぎす):ユリ科の多年草。

「廓」:「郭」と同じ意味を持つほか、「廓大/郭大(かくだい)」のように大きい、広い、空しいといった意味や、広げるという意味を持つ。
・廓清(かくせい):これまでの不正を取り除き、清めること。
・廓寥(かくりょう):広大でがらんとしていて、物寂しいさま。

「椁」「槨」:訓読みは「ひつぎ」「うわひつぎ(=棺を蓋う外囲い)」。漢検漢字辞典ではそれぞれ別の漢字扱いだが、用例も全く同じ。
※棺椁/棺槨(かんかく):死体を納める箱。ひつぎ。

②トン系

「トン」と読むパターンは例外的ですが、後述の③ジュン系と意味・用法で重なる部分が多いため、関連付けて覚えるのが得策かと思います。

「敦」:「あつ(い)」と読み、手厚い、人情が厚いという意味。
・敦厚(とんこう):誠実で人情に厚いこと。篤実なこと。
・敦朴/敦樸(とんぼく):人情に厚く、正直で飾らないこと。
「とんぼく」と読む場合は「敦朴/敦樸」のほか、「惇朴/惇樸」も正解になる。なお、「惇朴/惇樸」は「じゅんぼく」とも読み、「純朴」「淳朴」「醇朴」なども「じゅんぼく」。「トン」としか読まないのは「敦」のみのため注意。

③ジュン系

「惇」:人情に厚い、まごころという意味。人名でよく使う。「トン」とも読むが、「ジュン」とも読める用例のみ。
※惇朴/惇樸(じゅんぼく/とんぼく):飾り気がなく、真心があること。

「淳」:人情が厚い、または素直であるという意味。この字は「トン」とは読まない。
・淳厚(じゅんこう):真心があり、手厚い。「醇厚」とも。
・淳朴(じゅんぼく):人情が厚く、飾り気のないこと。

「醇」:食パンの商品名で「芳醇」とあるのが最も有名な例か。この意味では味の濃い酒、混じり気のない酒という意味。その他、「もっぱら」や混じり気のないという意味で「醇正(じゅんせい)=純正」、手厚い、人情に厚いという意味で「醇厚(じゅんこう)」など。「シュン」という用例はないので、この読みを注意する場面は少ないかと思われます。
・芳醇(ほうじゅん):酒などの香りが高く、味わい深いこと。
・醇化(じゅんか):①混じり気がなく純粋にすること。②手厚く教化すること。「純化」とも。
・醇酒(かたざけ):発酵させただけの、濃い濁酒(どぶろく)。濁り酒、煉(ね)り酒の類。
・醇風美俗/淳風美俗(じゅんぷうびぞく):人情が厚く好ましい風俗や習慣。

「諄」:「ジュン」と読む他の漢字と同じく「あつい」という意味はあるが、この字に関しては「くど(い)」という意味で使われることが多い。
・諄諄(くどくど):①話などをしつこく繰り返して言うさま。②思い切りの悪さま。
・諄諄(じゅんじゅん):よく分かるように何度も繰り返し、丁寧に説く様子。

「鶉」:「うずら」という鳥の名。
・鶉衣(じゅんい):つぎはぎだらけのみすぼらしい着物。弊衣。
・鶉居(じゅんきょ):定まった巣を持たないウズラのように、あちこち点々として住所が定まらないこと。

④ジュク系

漢検漢字辞典で「ジュク」の見出し語として挙げているものは以下の3つのみ。

「孰」:漢文等で疑問・反語の助詞として「たれ(誰れ)」「いずれぞ」のように使う字。「ジュク」という音読みでの用例は掲載なし。

」:常用漢字。意外(?)にも表外読みを含め「ジュク」の音読みのみ。学問・技芸を教える施設の学び舎という意味で、いわゆる「塾」そのもの。
※家塾(かじゅく): 個人の経営で学問、技芸などを教える塾。私塾。
※義塾(ぎじゅく):身分などにかかわりなく、一般の子弟も平等に教育を受けられるよう、寄付金などでつくられた塾。

」:常用漢字。「塾」とは打って変わって訓読みが多い字。「う(れる)」という意味では「熟成」「完熟」、「に(る)=煮る」では「半熟」、十分なという意味で「熟練」、「つらつら」、詳しくという意味で「熟考(じゅっこう)」「熟視(じゅくし)」、こなすという意味で「熟練」「習熟」など。「熟語」という単語でも使うが、これは「こなれた言葉」という意味合い。
・熟議(じゅくぎ):よく相談すること。十分に論議すること。
・熟寝(うまね):気持ちよくぐっすり眠ること。熟睡。
・熟熟(つくづく/つらつら):①よくよく。念を入れて。②身に沁みて感じ入るさま。
・熟鮨(なれずし):塩漬けの魚に飯を合わせ、酢を用いないで自然発酵させて作る鮨。くされずし。
・熟瓜(ほぞち):よく熟したマクワウリ(甜瓜)。

⑤その他例外

」:常用漢字。パーツを代表する字ではあるものの、これを含む文字の読みとしては共通点が乏しい。受け入れるという意味のほか、もてなすという意味で「享宴(きょうえん)」、捧げるという意味で「享祭(きょうさい)」、用例はないが当たる、かなうという意味も持つ。
・享受(きょうじゅ):恩恵を受け入れ、自分のものとして楽しむこと。
・享年(きょうねん):天から受けた寿命。死んだときの年齢。行年(ぎょうねん)。

「亨」:通る、差し障りなく行われるという意味では「コウ」、煮るという意味では「ホウ」。「キョウ」は辞書等で用例が見当たらず。
※亨通(こうつう):とおる。通達する。
※亨熟(ほうじゅく):十分に煮る。

「烹」:煮る、料理をするという意味。比較的有名な使い道としては「割烹(かっぽう)」があり、包丁で切って(=割)、火を使って煮る(=烹)ことから調理をするという意味。
:烹鮮(ほうせん):①生魚を煮ること。②国を治めるのに焦って余計な策を施すと、かえって効果が上がらないことのたとえ。小魚を煮るとき、手を加えすぎると崩れてしまうことから。「鮮」は生魚の意味。