漢字で書いても「得をしない」熟語(漢字の文字数より音が少ない言葉)

漢検

漢字で書くメリットの一つに、省スペース化があると思います。
例えば、「がっこう」という言葉を平仮名で記せば4文字必要なのに対し、「学校/學校」と書くことで2文字に減らすことができます。
「アメリカ」「フランス」を「米」「仏」と記すのも、限られた文字数の中で情報を伝えられる漢字ならではの工夫といえるようにも思います。

このように、漢字で書くことで文字数を「得する」ことが多い一方、他方、熟字訓(いわゆる「当て読み」)の中には、漢字で書いた方が文字数が増えてしまうケースもあり得ます。

今回はこうした「得をしない」熟語を調べてみました。

「得をしない」熟語一覧

今回は「漢検漢字辞典 第二版」に掲載された見出し熟語のうち、いわゆる熟字訓、当て字に絞って纏めます。

項番読み漢字表記別表記意味・備考
1えい海鷂魚エイ目の軟骨魚の総称。
2えせ似而非似非似ているが本物でないこと。
3えそ狗母魚エソ科の海魚の総称。
4かせ石陰子ウニの別称。
5きぶし木五倍子旌節花/通条花キブシ科の落葉小低木。
6くさぎ海州常山/臭牡丹樹臭木クマツヅラ科の落葉小高木。
7ぐみ胡頽子茱萸グミ科の植物の総称。
8こげら小啄木鳥キツツキ科の鳥。大きさは雀くらい。
9こち牛尾魚鯒/鮲コチ科の海魚。
10さば青花魚青魚/鯖サバ科の海魚。
11石花/石蜐カメノテの別称。「蜐」は漢検配当外。
12たら大口魚タラ科の海魚の総称。
13とき桃花鳥朱鷺/鴇トキ科の鳥。
14とち七葉樹栃/橡トチノキ科の落葉高木。
15はぎ胡枝子/胡枝花マメ科の低木の総称。
16ばす馬尾毛ウマの尾の毛。織物や釣り糸などに使用。
17はぜ蝦虎魚沙魚/鯊ハゼ科の魚の総称。
18はぶ飯匙倩波布クサリヘビ科のヘビ。
19はらん蜘蛛抱蛋葉蘭ユリ科の多年草。
20ひら曹白魚平/鰣ニシン科の海魚。「鰣」は漢検配当外。
21ひわ金翅雀アトリ科の小鳥の総称。
22ふし五倍子付子/附子ヌルデの和布などに寄生虫がついてできる瘤状のもの。
23ぶな山毛欅椈/橅ブナ科の落葉高木。「山毛欅」は漢名からの誤用。「橅」は漢検配当外。
24ぼけ鉄脚梨木瓜バラ科の落葉低木。
25むべ野木瓜郁子アケビ科のつる性常緑低木。
26海布食用にする海藻の総称。ワカメやアラメなど。
27やし香具師野師/弥四祭礼や縁日など人出の多い場所で見世物をしたり、モノを売ったりする人のこと。
28やつで八角金盤八手/金剛纂ウコギ科の常緑低木。
29ゆば豆腐皮湯葉/湯波/油皮豆乳を煮立て、表面に張った薄い皮を掬いあげて作った食品。

なぜ「得をしない」表記になるのか

漢字には基本的には意味と読みが与えられているため、漢字1字について最低1音は読ませるのが通常です。
しかしながら熟字訓(当て字)の場合はそうとは限りません。今回上記に掲げたものも「漢名」(昔の中国で使われていた表記)由来のものが多く含まれています。これは、中国語の表記に日本語を当て嵌めているため、文字数の逆転が発生し得るのです。

参考資料

1.広辞苑

2.漢検 漢字辞典